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小説
夢寐―むび―


〜シリアス














犬夜叉が血を流してぐったりと項垂れている。

その左胸には、神々しいまでの光を放った真新しい一本の矢。


駆け寄ろうとして、気付く。


私の手に握られている弓。


状況が詳しく分からなくても、弓を見た瞬間ひとつの可能性が浮かぶ。




ワタシガイヌヤシャヲコロシタ…?



「っ…やあぁぁああ!!」




『夢寐―むび―』






「…っは……は…」



目が覚めたら、そこは自分の部屋だった。汗はびっしょりかいてるし、口の中もカラカラで喉が痛い。

こんな夢を見た理由。やっぱりこの前のことなのかな。



二日前

犬夜叉には告げずにこっちに帰ってきた。彼は怒りもしなかったし、追っても来なかった。

――あの人に、逢いに行ってたから。

いつもいつも、帰る間際に騒がれるのも困るけど、隣に彼がいないのも寂しい。


井戸に入る前に、呟いた。

「……おすわり」


もしあの人を抱き締めている最中だったら申し訳ないわね、と思いながら嘲笑した自分は醜いと思う。


珊瑚ちゃんには三日後、つまり今日帰ると言ってきた。

でもこんな顔じゃ…とてもじゃないけど戻れない。

枕を抱いて、ベッドから降りる。床に座り膝をかかえていると泣きたくなってきた。


枕に顔を埋めると、さっきの夢が思い出された。






真っ赤な衣を黒く染める血

黄金色の瞳を閉じている瞼

地に力無く崩れている身体




夢の中の犬夜叉は明らかに、シンデいた。

そして、コロシたのは自分。


彼の顔は恐ろしいくらい無表情だった。



苦しみに悶えることもせず


痛みに顔を歪ませることもせず


それは、出逢ったとき――封印されているときの安らかな顔には程遠い。




…そう、桔梗はあくまでも『封印』したのだった。犬夜叉を憎みながらも殺しはしなかった。


なのに自分は嫉妬に溺れ、犬夜叉を殺した。



それが例え夢だとしても。



「……最低……私…。」




その時、閉めてあるはずの窓から冷たい夜風が頬に当たるのを感じた。




「……かごめ?」




来て欲しくないときに来るのよ、あんたは。

…今は絶対逢いたくなかったのに。





流れる沈黙に空気が重くなる。呼吸をするのがとても苦しい。




犬夜叉は、「泣いてるのか」とも「どうした」とも言わない代わりに、枕ごと私の体を包んでくれた。



抱き締められている。



温もりが優しすぎてつらい。



私だって意地があるから、抱き返しなんてしない。


でも、じんわり目と喉が熱くなっていく。


こんなとき、犬夜叉みたいな嗅覚がなくて良かったと思う。


だって、あの人の匂いが衣に残っていたら…絶対耐えられないもの。







「……何も聞かないの?」



ただずっと黙っていられると、少し気まずくて。小さく尋ねると首を振る気配がした。


「…お前が言いたくねえなら聞かねえ。」


あと、と優しい言葉を続けられる。




「あっちに戻んのは…明日でいいぞ。」





…ほら、そうやって。

涙腺を崩壊させるの上手なんだから。






「……っ…ばか。」


涙声なのが分かる。苦しいのか嬉しいのか分からないよ、もう。




「……知ってる。」




強められた腕にすがるように泣いた。





あとであの夢の話をするね。



あなたは「たかが夢の話だ」と笑うでしょうか。




それでも、




夢の話だとしても、





罪深き優しいあなたを殺した私を



どうか赦さないで欲しい。









シリアスが書きたくなりました(^^;


かごめちゃんはこんな子じゃないっ!っていう突っ込みは胸の中にお納めください…


犬夜叉は桔梗にあったあとに珊瑚ちゃんに怒られればいい←笑

ちなみに「夢寐」は「眠っている間夢を見ること」という意味です。


お読みいただきありがとうございますm(__)m



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あきゅろす。
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