小説
そう遠くない未来に
(ほのぼの+甘)÷シリアス
夫婦犬かご
↑もはや訳がわからない笑
※『41,かたち』とほんの少しだけ繋がってます。
今日は珊瑚ちゃんとお留守番。妖怪退治に出掛ける夫らを見送ろうと、外へ出た。
真っ青な雲一つない空。名前も知らない鳥の鳴き声が遠くで聞こえる。
大きく息を吸い込み、目の前の緋色に目を細めた。青と赤のコントラストがキレイ。
そんな風に見ていると、彼がぴくりと鼻を動かしてこちらを振り向いた。
「珊瑚、おめー怪我でもしてんのか?」
「へっ?」
いきなり名前を呼ばれ、珊瑚ちゃんはきょとんとする。弥勒さまも少し眉根を寄せて、珊瑚ちゃんを振り返った。
「いや、血の匂いが…」
「!」
かあっと顔が真っ赤に染まる珊瑚ちゃんを見て確信した。
「犬夜叉おすわりぃ!!」
『そう遠くない未来に』
仏頂面でそっぽを向く犬夜叉。
申し訳なさそうに犬夜叉に謝る珊瑚ちゃん。
その様子に苦笑する私。
そして、珊瑚ちゃんを愛しそうに眺める弥勒さま。
日が傾き、夕焼けが辺りを照らし始めた頃、依頼を済ませ、帰宅した彼は私を見るなり不機嫌な顔をした。
仕方ないじゃない。デリケートな女の子の事情なんだから。
ていうか、まだ根に持ってるのね。
「おかえりなさい」
「……おう」
こんな時でも返事はしてくれる。そのことに少しだけ緩んだ気持ちは次の一言で吹っ飛んだ。
「おい、昼間の言霊の理由説明しやがれ」
そりゃ理由も分からず地面に叩きつけられれば誰だってそうだろう。
でも、この話はそう簡単に口に出せるものではない。というか、女の身としては出すのが戸惑われる。
「あのね、女の子には色々あるのよ…」
「納得いかねー」
犬夜叉は私の前に胡座をかいて座り、ムスッっと眉間にシワを寄せる。
これを説明しなければ彼の機嫌は直りそうもない。溜め息を1つ吐いて、昔保健で習ったことを思い出す。
うろ覚えだが、仕方無い。分かりやすいように丁寧に彼に説明した。
「……だからね、気付いても黙って、気遣ってあげるのよ」
「なあ、なんで女だけにそれが来るんだ?」
「え…あ、赤ちゃんを産むために必要だからでしょ」
「じゃあそれが来ねえと産めねえのか?」
「…よく分からないけど多分、ね」
話している内にだんだん恥ずかしくなってきた。こういう話を好きな人にするなんて…
そして目の前のこの人は少年のように疑問を投げ掛けてくる。際どい質問はなんとなくかわした。
「分かった?はい、この話はもう終わり!」
手をパン、と叩いてその場に立つ。気恥ずかしさに耐えれなくなった。そろそろ夕飯の支度もしなきゃいけないし。
「なあ、」
「?」
振り返ると何やら真剣そうな眼差しが向けられていた。なんだろう、と少し気になってもう一度座る。
「なあに?」
「あのよ、……」
突然ふと目を逸らされて、私は犬夜叉の横顔をみることになった。何なのか問おうと口を開くも、
「お前にはその…月のものってあんのか…?」
そこから一言も発すことが出来なかった。「開いた口が塞がらない」とはきっとこの事だろう。
「……んだよ」
それはこっちの台詞だ。しかし彼はそのような事を軽んじて尋ねる人ではないし、一瞬だけ合った真剣な瞳に誤魔化すことはしてはいけないと思った。
「……ある、わよ」
「!……そうか」
私は恥ずかしくて俯いた。火照る頬を彼に気付かれたくなくて。
だから、すっと私のすぐ隣に落ちた影の主に少なくとも心拍数は平常以上になったと思う。
「…じゃあ子供、産めんだな」
「え?」
ボソッと呟かれた言葉に思わず顔をあげてしまった。そこにあったのは、昼間の弥勒さまのような優しい夫の顔。
「お前に似たら…髪とか黒いんだろうな」
そう言って、犬夜叉は私の髪の毛に自分の指を絡める。その仕種がいつもよりどこか優しい。
「瞳は茶か」
顔を寄せられ反射的に目をつむる。間をおかず柔らかな温もりを瞼に感じた。
「犬、夜叉…」
「ん」
目を開けて、その黄金の瞳を見る。目を細めているからだろうか。甘い飴色が微かに揺れているように思えた。
―ああ、これが…
愛されている、ということらしい。愛おしそうに髪を撫でられ、瞳を覗き込まれ、唇を落とされる。
「じゃあ、ね…」
「?」
「私に似なかったら、どういう髪の色になるのかな」
分かりきってる答え。でも今、それを彼の口から聞きたい。…さっき色々質問してきたお返し、という意もあるけれど。
「そりゃ、お前…」
犬夜叉は自分の銀色の髪を一束持ち上げた。サラリとこぼれ落ちる銀糸が光を反射する。
「こういう色だろうな」
「じゃあ瞳は?」
「瞳は…この……」
ばっと犬夜叉が顔をあげ、ばっちりと目が合った。するとものすごい勢いで後ろを向いてしまった。
「ちょっと…どうしたのよ」
ひょい、と顔を下から覗き込もうとすると大きな手に阻まれてしまった。
「…んなこっ恥ずかしいこと言えるか!忘れろ!」
「え―!ずるい!さっき私には散々言わせた癖に!」
「それとこれとは別だ!」
「何よ―っ!」
進行を妨げている手を越えて彼の顔を見る。
「っな…!ばか……っ!」
そこには困ったように耳を垂らし、顔を真っ赤にした彼がいた。あら、と驚いていると開いた口を唇で塞がれた。
いつの間にか身体は床に倒され、長く深い接吻はしばらく続いた。
――
「俺で……いいのか」
「?」
押し倒されたままそんなことを聞かれても困る。ちゃんと主語を言って欲しい。
「……っな、に…?」
未だに治まらない動悸と息の乱れを抑えつつ尋ねた。
上に覆い被さる彼は切ないような、困惑のような笑みを浮かべた。
「もしも、だぞ」
「…っうん……」
「俺とお前が契り交わして子供が出来るとして、…」
―お前の相手が、俺でいいのか?
皆まで言わせず、犬夜叉の頭に腕を絡め引き寄せた。突然のことに彼はバランスを崩し、私の胸に顔が埋まったようだが気にしない。
「…今更何言ってんのよ、ばか」
そんな人があんた以外に何処にいるのよ。
「犬夜叉との子供、欲しいよ」
「っ…」
「犬夜叉?」
「…っ見るな……」
「…うん」
大切な、大好きな人と交わす契りはいつになるかな。
とりあえず、この腕の中にいる彼の背をあやすように叩く。すると応えるように私の背にも腕が回った。
ギュッと締め付けられる感覚が胸をつく。それが堪らなく嬉しい。
まだ、もうしばらくはこの愛しき人と二人だけの時間を過ごしたいな…なんて。
「目に見える愛の形、か…」
「え、なあにそれ」
ゆっくりと犬夜叉が起き上がり、再び視線が上と下とで絡み合う。
「お前のおふくろさんが言ってたんだよ」
「ママが…!」
「子供は親の愛の形なんだと」
「……そっか」
徐々に霞み、揺れていく視界。私は愛されて産まれてきたんだな、と心に深く染み渡る。今更ながら、母親の偉大さと尊さを知った。
「……かごめ」
「…ん、大丈夫」
瞬きをして視界の揺らぎを戻す。心配そうに見下ろす彼に微笑みかけると、そっと笑顔を返してくれた。
「……いつか、な」
「うん……」
照れ臭そうに視線を泳がせながら呟く犬夜叉。
そんな彼がなんだか可愛らしくてしばらく見つめていると、ピタリと彼の動きが止まった。
「…かごめ、…」
「どうしたの?」
「……月のもんが来たみてーだぜ」
「うそっ!!やだっ!!」
犬夜叉を突き飛ばして、袴を取り替えにいく。
だから、その後ろで盛大に溜め息をついて沈んでいた夫がいたことを彼女は知らない。
「俺とかごめの子供、か…」
いまいち想像がつかない未来に少しだけ緩んだ犬夜叉の頬。
「どっちか、っつーとお前に似てほしいけどな」
ぼそりと独りごちた犬夜叉はかごめが戻ってくる気配を感じ、慌てて口許を引き締めたのだった。
了
最近こういうネタ多いなあ…あまり好きではない方がいたらすみませんm(__)m
原因はなんじゃらほい、ってな感じで考えてみた。
1、保健の授業
2、様々なものからの影響3、自分の頭の構造
イメージは
RADWIMPS/25個目の染色体
いい曲です\(^O^)/
では長いあとがき、またお読み頂きありがとうございました!
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