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小説
ウィークポイント


甘甘(夫婦犬かご)
















「っざけんな!!やい弥勒!開・け・や・が・れ!!」


「諦めなさいよ…今日はダメだってば」


後ろ手に縛られた挙げ句、小屋の柱に鎖で繋がれている哀れな彼の姿に苦笑する。


『ウィークポイント』


「だから、今日は止めておけと言っているだろう」


夕方頃に急に入った妖怪退治の依頼。すでに準備が整っている珊瑚と弥勒だが、なかなか出発することが出来ない。


「雑魚妖怪なら俺が行っても問題ねーだろ!!」


この男のせいである。

今宵は月の出ぬ夜――すなわち朔であるから、と弥勒が気を遣って諭しているにも関わらず、頑なにそれを拒む。


「言霊を使うべきかしら」


「いや、もうすぐ終わるだろ」


そのときだった。


「だからてめえは足手まといだっつってんだろ!!」


バキッ


怒声と共に痛々しい音。次いでずるずると何かを引きずる音。それはそのまま小屋の中へ消えた。

しばらくすると、手をはたきながら弥勒が出てきた。


「お前の気持ちだけは連れていこう」


ぐいっとご丁寧に涙を拭うふりまでする。そしてこちらを振り返った彼は、それは素晴らしい笑顔だった。


「ね?」


「…さすが珊瑚ちゃん」


思わず顔を見合わせて苦笑する。

二人を見送ってから小屋に入ると、手を後ろに拘束及び鎖で繋がれてのびている犬夜叉の姿があったわけだ。




「あんの野郎…帰ってきたらただじゃすまさねえ」


じゃらじゃらと鎖を鳴らしながら低く呟く彼は、すでに髪が漆黒へと変わっている。


「犬夜叉、弥勒さまはあんたのために…」


「けっ、んなことしてもらわなくたって良いんだっての」


「もう!煩いわ、ねっ」


ほんの戒めのつもりで彼の脇腹をつつく。すると、彼の身体がビクリと跳ねた。


「っ!!」


「え?」


その意外な反応につい驚きの声がもれる。じろりと灰色の瞳で睨まれるが、今はそれどころではない。


「犬夜叉、もしかして…脇腹弱いの?」


「……だったら何だよ」


「へえーっ!」


途端に彼の顔が険しくなる。危険を察知したのか、不自由な身体でずずずと後方へ下がった。


「なんで逃げるの?」


「お前の顔が気持ちわりーから」


「失礼ね!!ばか!」


「っわ…!?」


つん、と脇腹を小突けば予想通りの反応。思いがけず見つけた彼の弱点についニヤリと口角が上がる。


「犬夜叉可愛いーっ!」


「やっ、やめ……っ!!」


















「…………」


「ちょっと、遊びすぎちゃったかしら?」


散々つつきまわして、気付けば犬夜叉はグデッと力なく倒れていた。

ぜはぜは、と少し息が荒いのは、弱点を突かれ続けたせいだろう。そんな彼を見て苦笑する。


「ごめんね?大丈夫だった?」


今更ながらの心配をする。


「だっ…たら、…やんじゃ、ねーよ…」


当然な返答をされる。近寄って、ゆっくりと彼の身体を起こすと再びじろりと睨まれた。


「許さねーからな」


「ごめんってば〜!」


「知るか」


「ごめんなさいって、ば」


「っっ!!?」


軽くつつくだけで地面に崩れてしまった彼。こんなにも弱いなんて、と込み上げる笑いを堪える。


「……完っ全にキレた」


「へ」


ボソッと聴こえたどす黒い呟きを聞き返すと、彼が一瞬、微笑った。

何やらよからぬ気配を感じ彼から身を退こうとするとゆっくりと足が重くなる。

何事かと視線を向けると、彼の足ががっちり絡まっていた。


「っきゃ!?」


いきなり足を引っ張られた。床に仰向けに倒され、これから起きるであろう彼のお仕置きに身を固くする。

そしてふと気付く。彼は今、腕を拘束されていたのだった。少しだけ有利になった状況に胸を撫で下ろしたときだった。


「なめんなよ」


ぢゃら、と鎖の音が不吉に響く。なんなのだ、この余裕は。


「公平に行こうぜ、かごめ」


今から手ぇ使うんじゃねえぞ、と耳元で低く呟かれては抵抗なんて出来ない。


「なに…するの、よ」


「かごめの弱点探し」


ふっと耳朶にかかる熱い吐息。思わずビクリと動く身体が恨めしい。ああ、やんなきゃ良かった…なんて今更後悔。


「耳、よえーんだ?」


軽く耳たぶを甘噛みされ、その甘い声に翻弄され、私は彼に、


堕ちていった。
























「まあ、こんなもんだろ」


許してやるよ、と満足気に解放されたのは彼の髪が銀髪に戻ってからだった。


「おめーの弱点、なんかたくさんあんのな」


耳と、首と、…と数えだす彼に反撃とばかりに教えてあげることにした。


「私の……」


「ん?」


先ほどまでの大人な表情は何処に行ったのやら。無邪気な少年の顔が本当に憎たらしい。


「私の、本当の弱点……知りたい?」


ぴくりと動いた犬耳ときらりと輝いた瞳は肯定を意味するのだろう。

その可愛らしい犬耳を自分の口元に引っ張ってくる。


「っんな!?」


この反応から見ると彼は耳も弱いのだろう。小さな発見は心の中に秘めておく。


「私の弱点は…―――」


「!!」


顔を覗き込むと赤い顔で、なんとも複雑な表情で笑う彼の姿があった。


「……覚えとく」


ぷいっとそっぽを向くのは彼が得意な照れ隠し。とうとうもれた私の笑い声に、ちろりと一瞥をくれる。

そんな顔も好き、だなんて言ったら彼は更にご機嫌斜めになるだろうか。

ちょん、と脇腹をつつくと今は効かねーぞ、とぶっきらぼうに教えてくれた。

どうやら朔の日だけ効くらしい。覚えとく、と笑いかけると苦笑が返された。



弥勒たちが戻ってくるまで、あともう少し。













「私の弱点は…」















――あなたよ、犬夜叉…



だから、あなたが私に触れるところは全部私の弱点になるの。












終わり方ーー!

きゃー殺し文句!とか思って書いたんですけど…もしかしてそうなのって私だけ?(°°;)


かごめちゃんの弱点は耳と、首と何処だったんでしょーかね笑

みなさまのご想像にお任せします!(^O^)笑


最近S朔犬多い…
彼は紳士なはずなのに←


お読み頂きありがとうございました!

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