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小説
まどろみ日和


(犬かご夫婦)













ふと目を開ける。

目の前には明らかに午前ではない空が広がっていて。

ああ、眠っちゃったんだななんてぼんやり考えながらゆっくり起き上がって伸びをするのだった。


『まどろみ日和』


傍らに視線を移すと、思った通り。摘みかけの薬草が落ちていたり、乾燥させっぱなしの薬草が落ちていたり。

やっちゃった、と心の中で舌を出しながら後片付けの作業にうつる。

多分もう夕暮れ前頃なのだろう。一番穏やかな時間帯でもあってやけに欠伸が出る。


「…ふぁ〜…あ…」


「でけー欠伸だな」


「ひゃあ!?」


気配が感じられなかった。日頃の巫女修行の努力はどこへいったのやら。

いきなり驚かされて、ムッと後ろを振り替えると、


「んだよ、おねむか?」


してやったり顔の犬夜叉が立っていた。


「何よ、ちょっと寝てただけじゃない」


「お前のちょっと、ってのは半日かよ」


「…いつから見てたの?」


「薬草干してるとこから」


最初の方からじゃない見てないですぐに起こしてよ!という文句は心の中へ閉じ込める。


「昨日、あんまり寝れなかったのか?」


犬夜叉はそう言いながら、私の前にしゃがんで目元の涙をすくってくれる。


「ちゃんと寝たわ、…多分…」


言いながら、ふぁともう一度欠伸をする。再び視界は涙で揺れた。


「まだ眠れそうだな」


彼は苦笑しながらその場に座った。と思うと


「来い、かごめ」


半ば強引に私の腕を引いた。


「わっ!?」


ぼんやりしていたこともあって、私は犬夜叉の足の上に倒れ込むように尻餅をついた。


「い、痛くなかった?」


「あ?なんでだよ?」


「だって…重いから…」


結構な力で引かれたので、比例の原理的にはかなり体重がかかったはず。


「ばーか、逆に軽すぎなんだよお前は」


言うなりむんずと腰を掴まれた。


「ちょっと!!どこ触ってんのよ!」


触れられてるところが熱くて。逃れようともがくと肩に重みを感じた。どうやら頭を乗っけているらしく、声が耳に近い。


「別にいいだろ」


こうしてなきゃ消えちまいそうなんだよお前、と呟かれて黙らないわけにもいかない。


「ねえ、犬夜叉」


「…ん」


「好きよ」


「っんな!!!」


振り返ろうとするとものすごい力で抱き締められた。


「み、見んじゃねえ!」


…と言うからには照れているのだろう。さっきのお返しよ、いい気味だわ♪


「…今内心でばかにしたろ、お前」


「え!…えーと…してないわよ〜」


「信用できねー」


顔は見れないけど笑ってるみたい。声音がとても穏やかだ。身体を彼に預けているとまた眠気が戻ってきた。気付かれないように小さく欠伸…


「寝ていいぞ」


気付かれてた。


「ここで寝たら犬夜叉に悪いわよ」


「俺が、ここで寝て欲しいんだよ」


なんて、一瞬くらりと来た自分が悔しい。


「…じゃあお言葉に甘えて」


「おう」


目を閉じても鮮やかな緋色と、風になびく銀色が見えるようで。

聴こえてくる鼓動も、呼吸音も全て愛せるような気分。

――きっと目が覚めたときに、「寝すぎだ」って言われるんだろうな。



頬を掠める銀色の髪を感じながら、私は心地好さに身を委ねたのだった。






最近のと比べると短いお話っすね!←

夫婦になったら犬夜叉はさらりと殺し文句が言えるといいよ笑


お読みいただきありがとうございました!

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