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小説
貴方の本音を聞きましょう

甘(犬かご、弥珊






がささっ


「…おい、音立てるんじゃねえよ」


「これでも気を付けてるんです」


犬夜叉の顔には土や葉が、弥勒の顔には痛々しい赤い手形がある。

茂みに体を隠しながら、二人の男は尾行をしている最中だ。


誰をか。

怒らせてしまった想い人をだ。



『貴女の本音を聞きましょう』


時を遡ること数時間前。

依頼された妖怪をなんなく退治し、報酬を求めて村に戻っていった一行。

しかし、妖怪退治に訪れた村は貧しくて報酬は出せないと言う。

腑に落ちない表情の弥勒を置いて、先へ進もうとしたその時。


「代わりといってはなんですが、今晩の宿と……」


寝床と一緒に手に入れたのは、村の可愛いおなご達。


「もう、やだ弥勒さまったらぁ〜!」


「犬夜叉さまあ、お酌致しますぅ!」


花魁顔負けの麗しい女たちは、外見は良い二人の男にべったりしっぱなしである。

弥勒は嬉々として相手をし、犬夜叉も満更ではない顔をしている。


当然放っとかれる女二人。


ぷちり


同時に無言で立ち上がる二人に、少なくとも一人はおののいた。


「ど、何処に行くんじゃ?」


「「さんぽ」」


異質な空気をまといながら外へと向かうかごめと珊瑚。

それを怯えた目で送る七宝にようやく気付いた犬夜叉。


「お、おぅ!かごめ何処に…」


「さんぽよ」


「お前…なに怒って…」


犬夜叉がかごめの肩に手を伸ばす。

次の瞬間。

凄まじい勢いで言われた言霊によって地面に叩きつけられた犬夜叉がのびていた。


「あ、かごめちゃん。ちょっと待っててくれないか」


そう言うや否や、つかつかと女に囲まれて上機嫌な弥勒の前に立ちはだかる。


「おや、珊瑚!どうしましたか?」


「なんでもないよ、法師さま」


にっこり微笑む珊瑚に一瞬魅とれた弥勒。

次の瞬間。

顔が右に倒れ、左頬に赤い跡をつけた弥勒が呆然としていた。


そして、犬夜叉と弥勒は「さんぽ」に出掛けたご立腹である二人をこっそり尾行しているのだった。





「本当に…あんの助平法師めっ!!」


「鼻の下伸ばしちゃって…信じらんない!」


「女に刺されて死ねば良いのに!」


「わかる!一体何股したら気が済むのかしら!」


ねーっ!と顔を見合わせては愚痴をこぼし合うかごめと珊瑚。


それは、二人の5mくらい後ろの茂みに隠れている男達にばっちり聞こえてる。


「…散々な言われようですね」


「…おめえに言われたかねえよ」


落ち込みながらも、耳を傾ける二人。そんなことが行われているとは露知らず、所謂「ガールズ・トーク」は始まるのであった。



「…ねえ、なんで珊瑚ちゃんはあんな女好きな弥勒さまのこと好きなの?」


「えぇ!?///」


その疑問に大きく反応したのは珊瑚。鳥たちがその声に驚き、空へ一斉に飛び立った。


「す、す、好きなんかじゃないよ!嫌だな、かごめちゃん!///」


手をぶんぶん横に振る珊瑚。素直じゃないなあ、と思いながら聞き方を変える。


「じゃあ、弥勒さまのどの辺が格好いいって思う?」


かごめの目はすでに興味津々な輝きを放っている。


「格好いい…というか…」


それに諦めを感じ、珊瑚は考えながら答える。


「風穴のこともあるのに気丈に振る舞う姿は…強いと思う。あと、その…」


たまに優しいところは好きかも、と顔を真っ赤にする珊瑚。その姿は女のかごめから見ても、


「珊瑚ちゃん可愛い!」


「そ、そんなことないよ!かごめちゃんの方が可愛いだろう!」


慌てて否定するも、顔が赤ければ説得力の欠片もない。が、反撃とばかりに珊瑚は目を細めて笑った。


「そういうかごめちゃんはどうなのさ?犬夜叉のどこが好きなんだい?」


「へっ!?///」


かあっと目に見えて頬を染めるかごめ。言いよどんでいたが、先ほど質問したから答えなければと思ったのだろう。


「私も、不器用な優しさが好き…かな?//」


「分かるよ。不覚にもときめくんだよね」


くすりと笑いあって、珊瑚に続きを促される。


「あとは…なんていうか…もう傍に居るだけで幸せになれるから…//」


照れながらも笑うかごめを見て、珊瑚が今までに会ったどんな人よりも綺麗だと思った。


「…でも、結局私ばかりが好きなのよね」


「かごめちゃん…」


「不安になっちゃうのって女の子だけなのかな?」


「…あいつらは不安になりそうにないもんね」


「珊瑚ちゃんにもある?」

「うん…法師さまの女好きが直らないのは、あたしに魅力がないからかも、とか…」


「身近すぎて気付かないのよ。大切な人って…」


「なんか悔しいなあ…」


「うん…」


はあ、とどちらかともなくついたため息は大きな空に吸い込まれた。


「…ばか法師」


「…ばか犬」


風に掻き消されそうな程、微かな叫びは何処に届くのだろうか。



「…耳に余る暴言ですな」


「…誰がばかなんでい」


「「!?」」


…少なくともばかな男二人には届いたようだ。


「かごめ、ちょっとこっち来い。」

「えっ、いっ犬夜叉!?」

ぐいと引っ張られて、遠ざかっていく二人を眺める珊瑚。


「…珊瑚」


「なっ、なに?」


突然声をかけられて、慌てて振り替えると、紫と黒の法衣に包まれた。


「ほっ、ほっ、法師さま!?///」


「はは、珊瑚。壊れたカラクリのようですよ。」


「な、なんだって!///」

むぅっとむくれると背中に回された腕が強くなった。


「…不安にさせてしまってすまない」


「ま、まさか聞いて…っ!///」


あぁ、と小さく頷かれる。

「珊瑚の本音、滅多に聞けませんから」


その優しい声音はずるい。火照った頬は目頭まで熱くする。


とんとんとあやすように背中を叩かれ、弥勒の肩に顔を埋める。


「…触るとこ、間違ってないかい?」


精一杯の強がり。


「いいえ、間違ってませんよ。」


あっさり一蹴された。


「…私はずっと、珊瑚の心に触れたかったのです。」


もちろん身体にもですが、とまた冗談混じりに笑う。


また、惹かれてく。と実感しながら、珊瑚は弥勒の背中に手を回した。










「ちょっと!何処までいくのよ!」


無言で引っ張られるのは、あまり気分が良いものではない。というか、痛い。


「……ばしてねえよ」


ぼそっと呟かれて聞き取れない。


「何よ?」


「だあぁ―っ!!」


頭をガリガリ掻いて、大声をあげる。と思ったら、いきなり振り返ってきて肩を掴まれる。


「は、鼻なんか伸ばしてねえっ!!!」


ええ!そこに怒るの!?と言おうとしたら、その前に口を塞がれた。


手で。


「あのな…あんな女どもより…」


耳元に口を寄せられて気付く。犬夜叉の頬が朱色になっている。


「お前の方が……」


照れているのか、なかなか言葉が紡げられない犬夜叉。そんな彼にこっちの方が照れる。


「…〜っ///」


耳から口を離されて、見つめられる。犬夜叉の少し朱色だった頬は完全に紅くなっていた。


「…口じゃ言えねえ//」


「ん…なんか伝わった//」

流れる熱っぽい空気にかごめは下を向く。…と、顎を軽く持ち上げられ、また視線が絡む。


「…でも口で伝えられる」

唇に押し付けられた熱は、流れる風に冷まされることはなかった。




その後、かごめと珊瑚はお互いに起きたことを照れたように語り合い、犬夜叉と弥勒は赤裸々に明かされる自分の行動に俯くしかなかった。








初めて弥珊要素!

……なんかピュアだ。いける気がする←( ̄▽ ̄)


ガールズ・トークって楽しいんですよねぃ( ̄ω ̄

久しくしてないけど……


お読みいただきありがとうございます!

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