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小説
誓い

犬かご

管理人的プロポーズ












「どうかな…?」


かごめは新しい巫女装束で、おずおずと俺の前に姿を見せた。

その姿はあの人に被ることはなく、俺はただかごめの姿に魅とれた。


「……おぅ。」


素っ気ない返事しか出来ない自分は昔から何も変わっちゃいねえ。


かごめはこんなにも……



『誓い』



「ようやく再び逢えたんですから。」


弥勒の一言により、今の状態に至る。


「「……」」


二人きりの楓の小屋に沈黙が流れる。楓は今、弥勒と珊瑚の小屋に行ってしまった。いや、それはまず置いておく。


本当に久しぶりに見たかごめは3年の月日の内に「少女」から「女性」へと変わっていた。


――何て声かけりゃいいんだよ……


待ちわびていたこの時。しかし、どうも昔と違う雰囲気に緊張してしまう。


ちらっとかごめを見ると、同じことを思っているのかまとう空気がかたい。




――

『そっ…か。』

俺の無愛想な返事に困ったように笑ったかごめ。いつもそんな笑顔をさせてばかりだった。

後悔はすぐにした。ただそれを上手く言葉で伝える術を知らない。

そのまま気まずい空気が今に繋がっているのだ。

――


「…俺は……寝るぜ。」


沈黙に耐えられなかった。バカ野郎だとは分かっちゃいるが、もしこの状態が続けば窒素しちまいそうで。

小屋の隅へ行く。そこは、かごめがいない間の俺の定位置…。


愛刀を抱えて目を閉じる。

と、その時。


「……」


隣に香る優しい匂い。


「…かごめ?」


目を開ける。
衣をそっと握られているのが分かった。


じっと前だけを見据えるかごめは凛としているようで、どこか儚くて。


…この人に触れても良いものなのだろうか。


おぶったり、抱き寄せたり、口付けを交わしたこともある。


でも今ではそれが躊躇われる。この爪はこの人を傷付けてしまうのではないだろうか。


「迷惑……だったかな。」


伏せられた瞳。長い睫毛がかごめの顔に影を落とす。

「勝手にこの世界に来て、消えて、また戻ってきちゃうんだもんね。」


そりゃ迷惑よね、と繰り返して哀しげに微笑う。


「私、戻って来なかった方が…」


震える肩が、目に痛い。


「ごめん!私珊瑚ちゃんのところに…っ!」


「…行くな。」


ぴたりと止まったかごめの手を軽く引き寄せて、隣に座らせた。


「…行かないでくれ。」


「……でも。」


「俺にはお前しかいねえんだ。」


泣きそうなかごめの頭を軽く撫でる。


「…抱き締めていいか?」

こくりと頷かれるのを確認して、できる限り優しく抱き締める。


懐かしい匂いがした。込み上げてくる想いは、無理矢理胸に閉じ込める。


「かごめ、聞いてくれ。」


俯くかごめの手を握り締める。


――まるで、あの時のように


「お前が、帰ってきてくれて嬉しかった。」


難しいことは考えねえ。ただ、ありのままに伝えりゃいい。


「俺の傍に居て欲しい。」


はっと見上げられる。その瞳は濡れていて、月光がそれを反射する。


「っ私も……」


犬夜叉しかいない、と嗚咽混じりに呟かれる。それでも、俺を真っ直ぐに見つめる姿が愛しい。


「……俺は、」


三年間、ずっと考えてた。

たとえ何年でも、何百年でも、かごめを待ち続けようと。そして、再び巡り逢えたその時は…


「俺には、お前が必要なんだ。」


種族の違いが思考を留めさせたときもあった。


例えば、感性の違いとか。

例えば、身体の造りとか。

例えば、生きる時間とか…

どれも、人間のかごめと半妖の俺の間に横たわる目を背けられない問題。

でも、それでも俺は、


「かごめ…」


お前を悲しめることの方が多いかもしれない。

苦しめることの方が多いかもしれない。

傷付けてしまうことの方が多いかもしれない。


「奈落との決戦の前…あの時の言葉、覚えてるか?」

かごめは俺が何が言いたいのか掴めないようで。それでも少し微笑んで頷いてくれる。


『命を懸けてお前を守る』


あの言葉に嘘偽りはない。そして、その気持ちはあの時だけじゃなく、今でも健在だ。


ただ、これから先歩んでいく道の中でひとつ加えなきゃいけない言葉がある。


「今度は…」


ドクンと大きく脈打つ心臓。先ほどまでの緊張とは比にならないくらいのもの。
自然と身体中が冷たくなっていく。

同時にかごめの手を握る掌に力が入る。


かごめに緊張が気付かれないように、小さく息を吐き出した。



見つめ返してくれる瞳に気持ちが吸い込まれる前に。















「俺の一生を懸けて、お前を幸せにする。」

















涙の匂いがする。でもそれはきっと哀しい涙ではなくて。


「……いぬっ…や…」


この愛しい気持ちをを何と例えることが出来ようか。


返事が出来ないほどまでに泣きじゃくるかごめに少し苦笑する。



――気持ちは同じだと自惚れてもいいか?


強く握り直した小さな手を引き寄せて、静かに唇を逢わせる。



重ねた唇から伝わる体温が愛しい。

唇を濡らすかごめの涙が愛しい。


全てが愛しくて。

それと同じくらい切なさが込み上げてきて。


さっき胸に押し込めた気持ちが、瞳から溢れたのに気付く。









やっと、















やっと、

















逢えたんだ……。















「私は…っ、一生犬夜叉の……傍に居ます……っ」


――ああ、これがきっとさっきの返事なんだろうな。

これからもずっとかごめの隣に居られると思うと更に、泣きたくなった。


もうすでに濡れている瞳を見られたくなくて、強く抱き締める。


幸せ、はもっと暖かいものだと思っていた。


暖かさはもちろんある。でもそれだけじゃないのだ。

嬉しいのに、悲しい。


楽しいけど、苦しい。


喜びがあるのに、切ない。

俺の中にこんなに多くの感情があることに驚くほどだ。

それも全て、かごめがくれたもので。


こういう台詞は柄じゃないが、俺の世界はかごめ中心で創られていると思うのだ。


俺も、かごめの世界の一部に関与出来てたらいい。


この先も、ずっと……













夜が明けたら、世界は今までよりきっと綺麗だ。


曇っているとしても

雨だとしても

風が強いとしても

どんな季節も、共に歩いてゆこう。


君と、歩いてゆこう。












管理人的プロポーズです。
他にもシチュエーションがたくさん浮かんでいるんですが、これが一番好きなシチュ!

そして気付く。また犬夜叉泣いてる笑

また逢えて、最初に過ごした二人きりの夜はこんな感じだったろうな〜…。

いや、だったらいいな〜( ̄ω ̄)笑


ずっと書きたかったので満足!^⌒^)=З


お読みいただきありがとうございました!

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