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clover...(立向居)

それは、とある日の放課後だった。
教室で鞄に教科書やノートを閉まって帰り支度をしていると、教室の扉がガンッと鈍い音を発てて物凄い勢いで開いた。
その音に驚いて生徒皆が扉の方を向くと、そこには息を切らせ涙目になりながらある一点を見つめている一人の少年がいた。

「立…向居……君…?」
「…梓恩さん………梓恩さぁーん!」

その少年の名前は立向居勇気。そして、彼が見つめているその先には私。
彼は私を見るなり涙をボロボロ流しながら、私目掛けて走り抱きついてきた。
その光景に教室中から雑音のような騒めきがおきる。

「え?何?ど、どうしたの、立向居君……?」

私も、いつものニコニコしている彼とは違うことに、徒事ではないと思った。
とりあえず落ち着かせようと頭を撫でてみると、彼は顔を制服の袖で拭き「すみません」と濁った声で謝っていた。
部活では飼い主を見つけて走りよってくる子犬のような表情をする彼が、逃げる所もないまでに何かに追い迫られている姿を見せる。
私は心配になった。「何かあった?」と聞いてみると、彼の口から予想とは異なることを言われた。

「お願いします…英語教えてください…!」
「……え…英語…?」





clover...






「あーそういえば…もうすぐだったね。期末考査。すっかり忘れてたよ。」
「とか何とか言って、梓恩はいつも学年10位以内の成績を維持してるけどな。」

とりあえず場所をサッカー部の部室に移して、部員総出で立向居君の話を聞くことにした。
さっきの時点で分かっているとは思うが、彼は英語を教えてほしいらしい。
どうやらサッカーに関しては努力家な彼も、勉強――とくに中学から始まる「英語」には早くも苦手意識を持っていて八方塞なようだ。
自分でいうのもなんだけど、彼が私に助けを求めてきたのは私の成績がいいからだ。
まぁ、マネージャーである私は選手と違って疲れる要素少ない。
朝練は早起きだと思えばいいし、放課後だって活動日誌とか書けばいいだけだし。
疲労が溜まることがない分、勉強する時間が作れるのだ。

「お…俺…英語が本当にできなくて…!」
「まぁ、中学校で初めてやる科目だしね。でも、一年生ってそんなに難しいことやったっけ?」
「いや、それは秀才だから言える台詞だろ。」
「秀才なら戸田だってそうじゃん。英語なら筑紫なんて余裕でしょ?」
「まぁね…外国人留学生は僕ほどじゃないけど美形が多いからね。英語如きで遅れはとらないよ。」
「容姿の話はともかく英語はペラペラだし。私なんかより筑紫に教えてもらった方が安心じゃない?」
「…僕は別にいいけど。日常会話と文法は少しズレがあるからね。下手に教えてしまうと返って混乱してしまうと思うよ。」

戸田と筑紫と私は眉間に皺を寄せながら悩む。
立向居君は「すみません…。」と申し訳なさそうに縮こまっている。
すると、石山が後ろから「まずは立向居の実力をみるのがいいんじゃないか?」と言葉を添えてきた。

「石山ナイス!立向居、何か授業でやったテストとかプリントとかないのか?最悪中間考査でもいいぞ。」
「……一様、この前の小テストを…」

戸田が立向居君から紙を一枚預かる。
立向居君曰く、それが一番最近受けたテストで、その結果が今回教えてもらおうと思った理由らしい。

「どれどれ………………………………………………立向居……これはどうにかできる問題じゃないぞ。お前。」
「え!?そんなに酷いの!!?ちょっと見せて!…………………………………………………………………ごめん、立向居君。私が悪かったよ。世の中には英語が壊滅的な人がいるんだね。」
「梓恩…それ軽く貶してるぞ。」
「「……………。」」
「……………すみません…。」

戸田と私が見た点数は敢えて伏せておこう。彼のプライドの為にも。
筑紫も石山もこっそり点数を見て、何も言わず立向居君の肩に手をおいていた。
それに立向君は泣き出しそうになっていた。
でも、一度涙を見ている私にとって、彼が泣いてしまうところはもう見たくない。
それに、彼は私を頼ってくれている。可愛い後輩のために先輩が一肌脱いであげてもいいのではないだろうか。
今までだって勉強は部活が終って家に帰ってからやっていたわけだし、部活が終った後少しぐらい残っても何の支障もないだろう。
どうせ考査の一週間前は部活自体休みになるし、私はそこから勉強しても何の問題もないだろう。私は、ね。

「…仕方ない。私でよければ教えるよ。」
「ほ…本当ですか…!あ…ありがとうございます!」
「ただし!……期末考査が終るまで部活動への参加は認めません!」
「…ぇ…えぇ!?そ、それだけは困ります…!」
「立向居君…この際だからはっきりいうけど……このままだと遅かれ早かれサッカーしばらくできなくなるよ。」

私が仁王の像のように厳しく立って言うと、願いが叶ってパッと明るくなった彼だったが「そ…そんな……」とさっきより涙を浮かべている。
彼には申し訳ないが事実である。でも、その分彼にはお粗末な点数は採らせたりはしない。
何故なら、私が教えるのだから。

「…と…戸田先ぱーい……」
「立向居。今回は梓恩が正しい。」
「うー…」
「まぁ、どうせテスト一週間前は全部活動休止なんだし。二、三日延びたとでも思えば大丈夫だって。」
「…でも……」
「何の柵もなくサッカーやりたいだろ?」
「はい!やりたいです!」
「なら我慢だ!…意地悪で言ってるんじゃないんだぞ。」
「うー…」

こうして戸田の許可を得た私と彼は、英語の特別講習会を開くことになったのだった。


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「じゃあ…まずはこの前の小テストで解けなかった部分を理解していこう。」
「は…はい!よ、よろしく御願いします!」

初日は誰もいない部室でやることにした。
図書館とか教室とか勉強に相応しい場所はいくつもあるけれど、いきなり苦手科目を静か過ぎる所でやるなんて息が詰まるだろうし、彼が落ち着いて勉強に励める場所がいいと思って、この場所を選んだ。
戸田達も「たまには様子を見に来るからな。」と言って承諾してくれたし、ここならサッカー部の活動状況もわかるから、私もマネージャーの仕事も少しはできると思う。

「じゃあ、まず一問目から“彼女は犬を散歩に連れて行った。”っていうのを英語に訳し…」
「…………」
「こらっ!」
「! す、すみません…!」

問題があるとしたら、彼がサッカーボールを蹴る音や戸田の掛け声とかに気を逸らされないかどうかが心配である。

「好きなことができないのは辛いと思うけど、これも貴方のためなんだよ、立向居君。」
「は…はい…。」
「よし!じゃあ、やるよ。」

木製の机には彼の不出来なテストの紙と、今日教えたことが纏められるように何も書いていないノート、筆箱が広がっている。
彼とは隣同士で並んで、私は問題の部分を指でコンコン鳴らして示した。

「“彼女は犬を散歩に連れて行った。”っていうのを英語に訳してみて。これなら簡単じゃない?(このテストでは間違っているけど…)」
「簡単…じゃないです…」
「考えて考えて!主語は“彼女”で動詞は“連れて行った”だよ!犬と散歩は私達が普段結構口にしてたりするよ!」
「え…えと…犬はドッグ…さ、散歩?…えと…」
「散歩は何をするのかな?」
「あ…歩きます!」
「じゃあ、英語では?」
「え…えと…………ぅオーキングです!」
「Walking!…まぁ、間違ってはいないけど、この場合はwalkなんだよ。ちなみにwalkは動詞もあるけど今回は名詞として使っているからね。」
「………そ、その後が…わかりません…!」
「まぁ、一問目はサービスね!“彼女は犬を散歩に連れて行った。”っていうのは、She took the dog for a walk .なんだよ。for a walkで“散歩”って覚えておくといいかもね。あと、tookはtakeの過去形だから注意ね。」
「…過去…形…?」
「…あれ?一年生はまだ過去形やらない?(でも、この問題は過去形だし…)」
「やった覚えがないです…。」

先ほど私は、彼がサッカーをしたいがために集中できないのが気がかりだと思っていたが、もしかしたら、それ以上の問題があるのかもしれない。

「…そっか。じゃあ、気を取り直して二問目の問題やってみようか。“私は四つ葉のクローバーを摘む”っていうのを英語にしてみて。これは現在形だし、大丈夫でしょ?」
「…えーと………」
「……主語は“私”で動詞は“摘む”だよ。(小テストだから四つ葉のクローバーは英語の注釈書いてくれてるし簡単だよ?)」
「…んーと……」
「……I pick a four-leaf clover .とかにしておけばいいよ。」
「そう…なんですか……?」

いや、これはもうあるとしか言い様がない。

「……立向居君。分かっていると思うけど………赤点とったら部活出れないからね。」
「……」
「というか…授業中居眠りしてるでしょ。」
「……はい…つい。」

確かに英語は文法ができても単語が解っていなければ問題はできないし、また単語が解っていても文法がダメなら問題が解けない。
でも、彼の場合、両方に問題ありのようだ。というか、ある。
サッカー部の練習が大変なのはマネージャーである私も知ってるし、彼本人も身をもって知っている。
だから、授業中に居眠りをして活動する気力を養いたいのも了解できる話ではある。でも、それでテストでいい点数が採れるわけがない。
彼の英語のテストが壊滅的だった理由がやっと分かった気がする。

「…一度赤点とった方が立向居君のためだと思うのは…私だけかな。」
「嫌です、梓恩さん!見捨てないで下さい!」

私が少し溜息を漏らして容赦ない言葉を呟くと、彼はまた泣きそうな顔をして強くすがりつくように私の体に抱きついてきた。
私は彼の行動に少し衝撃を受けて驚いたが、「見捨てないから落ち着いて。」と彼の頭を撫でる。

(ああ、またこの顔をされてしまった…弱いんだよな、こういうの。部活では小動物並に可愛いのに…いや、今も必死にお願いするところとか可愛いけどさ…。さて…どうしようか…。)
「あー…えーと……とりあえず文型とかは教えてあげる!それと、一年生で出そうな動詞とかも教えるから!だから…そんな悲しそうな目で私を見ないで…!」
「…文型?動詞??」
「……」
「……」
「……大丈夫!頑張ろう!やればできる子なんだから、立向居君は!」
「……は…はい…!」

これは私も、今回の期末考査は如何なる結果になってもいいように心決めておかないといけない感じかな。
こうして私と彼の、ある意味過酷な時間が始まった。


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「ここ、主語違うよ。これじゃあ、「彼の」じゃなくて「彼女の」になっちゃう。」
「え…でも…彼のってherが所有格です…よね…。」
「…立向居君……「彼」の主格・所有格・目的格…言ってみようか?」
「えーと……he-her-her……ですよね?」
「……ごめん、立向君。人称代名詞から教えたほうがいいみたいだね。」
「え?人称代名詞……??」
「一人称・二人称・三人称は分かる?単数形や複数形は?」
「え、えと…えと…えーと…?」


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「I-my-me、you-your-you、she-her-her、he-his-him…で…えと…三人称の複数形がthey-their-them……。」
「よーし…次は文型の話だけど…今のところで質問は?大丈夫?」
「な…なんとか…!」
「よし。じゃあ、話すね。英文には「文型」っていうのが存在してるの。で、その文型は五つあってね…簡単にいうと――SV、SVC、SVO、SVOO、SVOCで…それぞれ説明するとだね…」
「まままま待ってください、梓恩さん!SV?SV…何ですか…??」
「ごめん、早すぎちゃったね。」
「……すみません。理解力がなくて…。」
「大丈夫。まだ始まったばかりだから…もう一度説明するよ。SV、SVC、SV…」
「え、えと…えと…」


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「で…できました…!」
「よーし!採点してあげよう!どれどれ……」
「…ど…どうですか…!」
「……立向居君…単語のケアレスミス多すぎ!」
「えぇ!?」
「文法も理解できてるのに、単語が違ってたら減点だよ!」
「そ…そんなぁ…」
「はい!単語覚え直し!覚えるまで今日は帰さん!」
「…う〜…」


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「“私は四つ葉のクローバーを摘む”っていう英文…この前の小テストの問題と同じなんだけど…。」
「だから、I pick a four-leaf cloven .って…」
「…clovenってcloveの過去分詞か…形容詞で“二つに裂けている”とかって意味だよ。」
「あれ?“クローバー”ってc、l、o、v、e、n、 …ですよね…」
「違ぁあう!c、l、o、v、e、r !最後は「r」だから!」
「……あ゛…!?」
「…何…どうしたの…?」
「…ノートに…間違えて書いてました…。」
「…立向居君…“私は四つ葉のクローバーを摘む”っていう英文を50回書いてみようか…♪」
「えぇ!?」


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「よーし!もう教えることは何もない…はず!これなら赤点の心配はないよ。」
「…お…おわっ…た……。」
「…立向居君、大丈夫?顔赤いけど、もしかして知恵熱??」
「だ…大丈夫です…。」
「この一週間近くで入学当時からの内容全部詰め込んだもんね…明日はいよいよ期末考査。今日はゆっくり寝るんだよ。」

長いようで短いとはよく言ったものだ。
最初壊滅的な点数を見せられ、馬鹿丸出しの英語の知識を知らされ、一時はどうなるかと思ったけど、何とかなるもんだな。
今彼は気力を英語に全て吸い取られ、机に身を預けてぐったりしている。

「…梓恩さん、ありがとうございます。梓恩さんにだって勉強あるのに…」
「私は授業聞いてるし、ノートもまとめてるから。皆より勉強する時間だってたくさんあったし、立向居君が私の出した問題やってる間もそれなりに勉強できたし…大丈夫だよ。」
「本当に凄いな…!俺も頑張らないと…!」
「あはは…立向居君は十分頑張ってるけどな。」

でも、彼は本当に凄い子だ。この一週間で文法も習得したし、単語も暗記した。確実に英語の理解能力が上がったと思う。確実にだ。
これなら赤点なんていう心配はないだろう。私が言うのだから違いない。
まぁ、誰かに勉強を教えるなんてことしたことなかったから、正直自信はなかったけど…――

「梓恩さん」
「何?」
「俺、梓恩さんがいたから頑張れたんです!梓恩さんが教えてくれてたから頑張れたんですよ!」

今までの泣き顔が嘘のように、彼が笑った時、私の頑張りは報われたような気がしたんだ。

「……そっか。なら今度のテストは満点だね。」
「はい!満点だって夢じゃないです!」
「おぉ?期待しちゃうぞ?」
「はい!頑張ります!」


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期末考査が終わった。そして、テスト返却日。
その日から部活が再開するので、サッカー部の皆で部室で待ち合わせをしていた。
逸早く到着した私は机に荷物をおいて、椅子に座って待っていた。
すると、部室のドアがバンッと鈍い音を発てて物凄い勢いで開いた。そこに立っていたのは…――

「梓恩さん!見てください!」

満面の笑みで私の名前を叫ぶ、立向居君。
その笑顔から察すると、どうやらテストの点数がよかったみたいだ。
彼は答案用紙を私に差し出した。そして、私は思わず歓喜の声をあげてしまう。

「嘘ぉっ!?98点!?凄いじゃん!やっぱ立向居君はできる子だったんだね!」
「はい!今までで一番いい点数ですよ!しかも、学年で一番でした!先生も驚いてましたよ!」

私は思わず彼の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。彼は嬉しそうにそれを受けて、またキラキラした顔をしていた。
これで彼はサッカーを楽しくやることができるだろう。私も漸く責任から解放されて楽な気分になれる。
本当に私の頑張りが報われたのだ。よくやった、私。偉いぞ、私。

(よくやったぞ、立向居君。偉いぞ、立向居君。)

でも、ここまでくると一つ気になることがある。

「…でも、98点ってことは満点も夢じゃなかったってことだよね。何がいけなかったの?ケアレスミス?もしかしてスペル間違え…?」

そう。あと二点だったのだ。彼が満点を採るまで。彼だって自信があったはずだ。採れたと思ったはずだ。なら何がいけなかったのか。
彼はなんか満足しちゃってるけど、私は気になって仕方がなかった。だから、彼の答案で罰点がついている問題を見た。

(………“私は四つ葉のクローバーを摘む”って…これ…小テストの二問目じゃん…。)

その時、私は驚いた。彼が罰点をもらったのは、私が彼に五十回も書かせた英文だったからだ。
でも、私が見る限り、何処も間違ってない。先生の採点ミスかもしれない。
でも、彼はこの問題の英文を五十回も書いてるんだ。私が書かせたんだから。だから、彼だって答え合わせの時点で間違いだって思ったはずだ。先生に抗議しに行ったはずだ。
でも、それでも点数は上がらなかった。間違っていたのだ。

「…私の…教えミス…」
「え?あぁ、それは――」
「ごめん!ごめんね!」
「え?」
「私が間違った英文教えちゃったんだよね!私立向居君を馬鹿にできる資格なんてない!ごめんね!本当にごめんなさい!」

私はなんてことをしてしまったのだろうか。
彼の頑張りを、彼の努力を、私が間違った答えを教えたばっかりに無駄にしてしまった。最低だ。最悪だ。
さっき捨てた責任が戻ってきて、私の背中に圧し掛かる。私はそれに押しつぶされるように彼に頭を下げていた。

「ち、違います!答えは間違ってなんていません!」
「でも、答案用紙には「×」ついてる!この問題私が教えたのと同じだもん!私が教えたのが当たってたら「×」つかないもん!」
「本当に間違ってませんから!当たってましたから!」
「でも…」
「そんなことより!俺凄いこと発見したんです!」
「はぁ!?そんなことって…そんなことじゃないでしょがぁあ!」
「いいから聞いてください!本当に凄いことですから!」
「…本当に?」
「はい!」

私は感情が高まって逆に怒鳴ってしまったが、彼は答案の裏側に慣れた感じで文字を書き始めた。
その文字は英語――C、L、O、V、E、R――そのまま読めば「クローバー」である。それは彼が一番頑張って覚えた英単語。

「………クローバーがどうかしたの?」
「スペルを見てください!そのままだと確かにクローバーって読みますけど、CとLの間を離すと……」
「Cと…LOVER……?」
「梓恩さん、「と」は入れないで…そのまま読んで下さい。」

すると、彼は同じ単語を何回も書いた。何回も。何回も。私が解るまで。
そして、私は何回もその単語を読んだ。何回も。何回も。理解するまで。

CLOVER

C-LOVER

She-LOVER

「She…lover……彼女は恋人…」
「はい!」
「……」
「ね!凄いですよね!大発見だと思いませんか?(書いてる時に気づいたんです!)」
「……」
「…梓恩さん…顔が真っ赤ですけど…」
「へぇ!?そ、そんなことないと思うけど…!」

私は考えの単純な彼を見て、不覚にも赤くなってしまっていた。
確かに体の中の血液が沸騰しているような、熱がぶわって溢れて出るような感じはしてたけど、まさか顔に出てるなんて。
私は彼から目線を逸らし、彼の答案をよく見る。
すると、CとLの間に多少隙間がある。英単語のスペルを書く時、字と字の間に間隔をあけて綴るのは単語が伝わらなかったり、言葉として見なしてもらえなかったりする。
つまり、これは…――

「立向居君……もしかして故意にCとLの間空けた?」
「……何のことか俺にはわかりませんよ。」

心あってされた解答。
私は彼の含みのある笑みを見て、少し悔しくなったのだった。







clover...






「で、梓恩さん。ものは相談なんですけど…」
「何?」
「……俺とずっと一緒にいてくれませんか。」






50回の教え




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レポート課題とペーパー試験で地獄絵図の毎日を今送っています。五月雨梓恩です。
疲れました、人生に。…遺書ではありませんよ。これは。笑

今回は少しお馬鹿な立向居君の話です。
立向居君は歴史とか古典は得意そうですけど…数学とか英語とか弱そうですよね。
だから、英語の勉強を立向居君に教える設定にしてみました。ちょっとスパルタでしたけどね。
で、最後は少し一捻りしました。まぁ、よくある設定ですけどね。俗に言う「clover」ネタです。
いやー…無理矢理に捻じ込んでやりましたよ。大変でした。←死語?
でも、立向居君の平和な話がかけてよかったです。ほのぼのはやっぱり和みますね。好きです。

でも、今度はシリアスな話にしてみましょうかね。笑;


それでは、失礼します。

(2010/01/16)


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