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思春期トレイン(立向居)

※少しだけ言葉にR指定入ります。ご注意下さい。

「立向居。五月雨とさ…何処まで逝った?」
「……え…何処までって…何がですか?」

イナズマキャラバンの中でお昼休憩をとっている時に、綱海さんに質問を投げかけられて俺は真顔でそう答えた。
「何処まで」って言われても別に何処にも行っていないんだけどな。
何処か行ったとすれば、イナズマキャラバンで仲間探しをしていた時に各地方を廻っていたぐらいだし。
それに、綱海さんも皆さんもいたし。

「……お前、俺の質問理解してるか?」
「………よくわからないです…。」

俺が質問に悩んでいるのを見て、綱海さんは大きく溜息を漏らした。
それと同時に「…改めて聞くとか説明するとか恥ずかしいな…。」とか何とかブツブツ小言も漏らしていた。
ますますわからないです。綱海さん。

「綱海さんが言いたいのはね…五月雨さんとのお付き合いは何処まで進んだかってことだよ!」
「ぅおっ!?一之瀬!?」

すると、綱海さんが腰を下ろしていた席より後部座席から一之瀬さんが顔をひょっこり出した。
気配を全く感じなかったので、一之瀬さんの登場には俺も綱海さんも驚いた。綱海さんに関してはリアクションが大きかった。

「………なななな何で…そんなことをぉ…!」

しばらくして、俺は一之瀬さんの言葉を思い出す。
驚きの余り忘れていたけど、思い出した瞬間俺は体全体が熱くなって動作がぎごちなくなった。
俺の質問に対して、一之瀬さんには「いやー気になるでしょー。近くにカップルなんかがいたら何処まで進んだかっていうのは。」と清清しいまでの笑顔で言われてしまった。
すると、綱海さんも一之瀬さんの言葉に同意して頷いていた。
確かに、俺にはイナズマキャラバンに入ってから彼女ができました。
とても可愛らしい一つ年上の女の人で、サッカー部のマネージャーさん。俺には勿体無いほどの素敵な方です。
段々綱海さんや一之瀬さんの言いたいことがわかってきた。
要は、俺と彼女の恋愛の話を聞かせてほしいと言ってるに違いない。
でも、普通「恋バナ」というのは女の子の方が好きそうだと思うのは俺だけだろうか。あまり男子の間ではそんな話を聞かないから、少し新鮮である。
まぁ、きっと休憩の間の暇つぶし――余興のようなものなのだろう。早く話してしまおうと思った。
でも、正直にいうと――

「「で!何処までやったんだ!」」

皆さんが思っているようなことは何もないんですよ。本当に。

「…やったって…な、何もしてませんよ!」
「ほー…何もしてないって…」
「手を繋ぐのも」
「腕組むのも」
「膝枕も!」
「抱き合ったりも!」
「頬っぺたにちゅーも!」
「mouth to mouthも!deep kissも!!」
「大人の階段を上がることも!!」
「「まだってことでいいのか!!!」」
「こここここここここ声が大きいですよぉおお!」

俺達はキャラバンの通路を挟んで左右の席に上手い具合に向き合って座っていた。
といっても、俺一人に対し綱海さんと一之瀬さんが反対の席で俺に一方的恥ずかしい言葉をぶつけて来る。一之瀬さんに関しては発音がよすぎる。
いつの間にか話が本格的になっているような気がする。休憩の間の余興だと思っていたのは俺だけだったみたいです。

「へぇー…まだなんだ…。」
「立向居は俺達の期待を裏切らない初心な子なんだな…。できればそのままでいてくれ、立向居。」
「……もぉ…恥ずかしいですよ…。」

最初は少し軽い気持ちでその場にいたけれど、次第に居た堪れなくなってきた。今すぐ席を立ちたくなってきた。
だって、これ以上この場にいたら――

「でも、何も懐かないの?五月雨さんという彼女に対して?」
「そうだよなー。あんなに可愛い彼女がいるのに何もしたがらないっていうのもなー。」
「え…あ……いや…」

俺は何時しか赤裸々な姿さらけだすような状況に追い込まれてしまう気がする。
俺が口籠ったのも二人は見逃してはくれなかった。

「おいおい…何だよその反応…。」
「顔真っ赤にして明らかに何かを想像はしちゃってるよね…。」
「な……何もない…です…。」
「「……」」

体が熱湯に浸かっているような感じに襲われる。頭が少しぼーっとしてきた。
でも、自分のあまり触れてほしくない部分がむき出しになるのだけは避けたい。
俺はバレないように一生懸命目を二人に向け、唇を若干噛み締める。
すると、綱海さんと一之瀬さんはそんな俺を見た後二人で顔を見合わせて、何かを悟ったように――

「立向居…。」
「お前って嘘つけない子だよな…。」

俺の両肩に手をそれぞれおいてきた。
そして、次の瞬間――

「正直に言いなよ…――皆がいないところで一人でオナってるでしょ?」
「オナニーぐらいはわかるだろ?」

俺は赤裸の告白をしなくてはならない状況に追い込まれてしまったのだった。

「……」
「本当にお前って…」
「嘘つけない子だよね…。」
「……」

涙が出てきそうです。
そうですよ。俺は大好きな彼女で妄想してしまってますよ。
彼女を見る度に心の中でモヤモヤしてますよ。
俺は皆さんが思っているほど初心な少年ではありませんよ。
一之瀬さんや綱海さんに言われてしまったように、自分で性的快感を得られるようにしてますよ。
だって、だって、仕方ないじゃないですか。
俺は彼女が好きだけど、彼女に変なイメージ持たれたくないし彼女を傷つけるようなことしたくないし彼女と何時かちゃんとした形でしたいんですよ。
それの何がいけないんですか。俺何か間違ってますか。我慢してますよ、俺。
とか何とか叫びたくなった。でも、叫ばない。最後まで俺は何も言わず抵抗している。泣きそうだけど。
すると、綱海さんと一之瀬さんは「悪いことじゃないぜ、男なら普通に抜くから。」「俺なんて週に11回以上抜いたことあるよ。」とか何とか自分の羞恥心を曝け出していた。
俺が変な意地を張っているからか。それとも、俺が泣きそうだから励ましてくれているだろうか。それとも、遠まわしに素直に話せと言ってるのか。
どれにしても、俺は何だか重かった気持ちが楽になった。
でも、やっぱり恥ずかしいわけで…――

「…し……梓恩さんには……言わないで下さい…。」

小さい声で口にした。
すると、綱海さんと一之瀬さんは「まぁ…立向居も健全男子ってことだよな。」「いいことだよ。立向居。」と言って俺の言葉に耳を傾けてはくれなかった。

「あの…梓恩さんには…」
「「……」」
「あの……」

二人は何も言わなかった。少し黒く、不気味な笑みを浮かべて静まり返っていた。
そんな笑顔が俺の背筋をぞわっと駆けた。
そして、二人は立ち上がった。結局俺の言葉は無視されたままだった。

「まぁ、俺らよりは早く大人の階段上るかもしれないっていうのがわかったわけだ…。」
「そんな立向居には…これあげるよ。」

でも、二人は何もしないまま終らなかった。
ニヤニヤしながら俺を見ていた綱海さん。
爽快なまでの笑みで俺に何かが密閉してある小さな袋を渡してくれた一之瀬さん。
俺はそれが何なのか全く分からなくて、普通に「何ですか…これ…?」と聞き返すと、ハモるように言われた。

「「コンドーム」」

と。
俺の顔に血がのぼって来たのがわかる。しかも途轍もないほど速く。まるで急行列車が駅のホームを通過するように。
口をパクパクさせていると、一之瀬さんが「あぁ。ちゃんと薬局で買った奴だから大丈夫だよ♪」と言っていた。
いや、そういう問題じゃないんですよ。一之瀬さん。
でも、実物を見るのは初めてだった。
使ったことがないからわからないけど、話は聞いたことがある。
袋の中には薄いゴムで作られた男性用の避妊・性病予防用のサック――それが「コンドーム」。
つまり、変な話をすると、これさえあれば安心して好きな子と性交ができるというのである。

(つまり、これがあれば……梓恩さんと…………)

俺の中で邪な考えが駆け巡る。
でも、ハッとして頭をブンブン横に振る。そして、俺は慌てて返そうとする。

「……………ああああの…返却を、おお願いしたいんですけどぉ…!」

でも、綱海さんが「俺らからのプレゼントだから、貰ってくれよ。立向居。」と真剣な目で言った。
男前な顔ですけど、物が物なので困ります。綱海さん。
今更かもしれない。けど敢えて言わないといけないような気がする。
最初の登場が登場だったから気づかなかったけど、もしかすると綱海さんと一之瀬さんって共謀者だったのかもしれない。
このままだと、俺はこれを返せなくなる。
そういう欲がないというわけではないが、できれば俺はまだこんなのを使いたくない。
いつかちゃんとした形で一緒になりたいと思うから。だから――

「ででででも、お、俺……梓恩さんにはそういうことしないって決めてるんです…!だから…」

ガラッ

「あっ!皆いる!」
「#$%&$#%&+*!?」

返したかったのに返せなくなったことに悲鳴をあげた。
何を言ってるかわからない声をあげて、俺は手に持っていたのを、風を切るようにズボンのポケットに閉まった。

「……どうしたの?勇気君?」
「あ…いや……その…」

落胆せざるおえなかった。
だって、キャラバンの中に入ってきたのが、俺の大好き彼女だったのだから。

「五月雨さん…立向居は思春期真盛りなんだよ。」
「え?思春…」
「いいいいい一之瀬さん!」
「まぁ、五月雨…立向居の気持ちもわかってやれ。」
「え?あ…はい…。」
「つつつつ綱海さん!」

俺の反応が相当面白かったのか、一之瀬さんと綱海さんは笑いを堪えるように口を抑え、顔を真っ赤にして外に出て行った。

「…何話してたの?」
「な…何でもないですよ!何でも…あは…ははは…」

彼女は頭に疑問を浮かべて俺の顔を覗き込む。
いつもならこんな仕草でも俺は淫らな思いを懐いてしまう。
でも、今までキャラバンでしていた会話のことを振り返ると、無情が背中に圧し掛かってきた。

(これ…どうにかして一之瀬さんに返さないと……)

そして、ポケットにその場凌ぎで入れたのをどうするかで悩むはめになってしまった。どうしよう。本当に。

「まぁ…いいや。円堂君がグラウンドに来てほしいってさ。」
「…あっ…は…はい!」

色々考えなくてはならないこともあるけれど、練習時間がもう始まるらしい。お昼の休憩はもう終わりなのだ。
とりあえず今は練習に集中しよう。そう思った。
俺は慌てて身嗜みを整えて、キャラバンの扉に手をかける。
すると、彼女が小さい声で言った。

「……思春期か…勇気君…。」

と。
俺は聞き逃さなかった。その言葉に心が不安定になって動きがぐらついた。
そして、そのまま扉のところで額をぶつけた。

「ししししし梓恩さん…!?」
「ふふ…照れちゃって可愛いなぁ…もう…!」
「……。」

すると、彼女はクスクス笑いながら俺を見ていた。
胸が弾んだ。ドキッとした。
俺はそのまま扉を開けて外に出る。そして、止まることなくグランドに向かって走り続ける。
その時、体中が熱くなって、くすぐったくなったのは言うまでもない。





思春期トレイン





(…や…やっぱ返すのは……また今度にしてもらおうかな……)



END


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少し変態な立向居君を書きました。どうも、五月雨梓恩です。本日二回目の更新です。(一回目は『至福のヒート』でした。あれ書いてから12時間後ぐらいですね。たぶん。)
いや、中学生って思春期の塊ですよね。
立向居君は初心っぽいけど、でも彼だって男の子ですから。手淫とかしてしまってても可笑しくないと思います。笑;←発言に気をつけろ。
そして、ついに出て来ましたよ。イナズマキャラバンのメンバーが。
いや、綱海さんは三年生で兄貴肌だし、一之瀬君は帰国子女なので、その手の話は大丈夫だと思いました。

無論、管理人も大丈夫です!!

…誰に宣言しているのかはさておき。とにかく少し立向居君を変態にできたので今日はいいです。

それでは失礼します。

(2009/12/27)


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