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初デート!(戸田)

それは、今日から春休みに入るという時期だった。
授業がなく部活もないというわけで、久しぶりに早く家に帰ってゆっくり体を休めようかと考えていた時だった。

(っといっても…いざ休みになると何していいのか分からないよな…。普段の練習はキツイから休みたいって思ってしまうけど……さて、何するかな…。)
「戸田先輩…!」
「ん?…って、五月雨?」

教室の外で声をかけられた俺は振り返る。俺を呼んだのは普段部活で見慣れた年下の女子生徒だった。

「どうしたんだ?」
「あ…ああああああの…ああのですね…えええと…ッ…」
「…とりあえず、深呼吸してみようか…。」

その女子生徒は、俺が所属するサッカー部のマネージャーをしてくれている。普段は長い髪を一つに結んでいて、物事に拘らない性格だからか打ち解けやすい気軽さがある。だが、今日の彼女は少し変だ。
壁際に立っていただけのはずなのに、俺の方へ近づくにつれて、呼吸が激しく苦しそうになっていた。
別に走ってきたというわけでもないのに、どうしてそんなに乱れているのかがわからない。
それに、彼女の顔が芯のほうから赤くなってるようだった。いつもは色白なのに、異様なまでの変わり方だった。

「あの…あの!あ…明日…お、お暇ですか?」
「明日?…まぁ…明日は部活が午前中あるのは五月雨も知ってるだろ?だから、それからなら暇だけど…?」

ついさっき俺は休みに何するかわからないって悩んでいたけど、実はサッカー部の予定を考えているのはキャプテンの俺とマネージャーである彼女で、春休み中に合宿を集中的にやりたいと思っていたから、それが始まるまで練習を午前中だけにしたんだよな。
今更だけど、午後も練習入れればよかったかもしれない。だって、暇だから。
でも、何で予定を把握しているであろう彼女が、そんな質問をしてきたのか疑問である。

「あの!…あの…」
「…?」
「私と…デートしてくれませんか…?」

その理由が明らかになった時…――

「…デート?」

俺は目を大きく瞬いていた。









初デート!







で。次の日という蓋を開けてみると…――

(来てしまったわけだが……俺、デートなんて人生初めてじゃないか…?というか、今までだって異性と遊びに出かけることなんてなかったぞ…。)

ついつい誘いを承諾してしまった自分がいた。
待ち合わせ場所は、駅前の時計台。待ち合わせ時間より15分も早く、俺はその場所に立っていた。何ともベタな場面なのだろう。
引き受けてしまったのは決して悪くなかった。でも、「デート」という言葉の所為で、結局昨日は眠れなかった。なんか張り詰めて、張り詰めすぎて、眠れなかった。これもベタなのかもしれない。
だって、ただのサッカー部のマネージャーだと思っていた子と、部活終わりに時間と場所を定めて、待ち合わせして、男と女の交際をしようとしている。

(筑紫や石山とかに黙って…二人で待ち合わせして遊んでるって……これは逢引だ…!)

とか何とか思うわけだけど、厳しい練習の後だったわけで、「ふぁ〜あ…」と欠伸が漏れる。
まぁ、眠いけど、やることがない休日に予定ができたのはよかったと思う。
それに…――

「戸田先輩〜!」
「!」

普段見慣れない姿で、俺を見つけるなり嬉しそうな顔をしている彼女を見せられてしまったら、不安になったなんて不平、言っていられない。
俺は不随意的に起る呼吸運動を停止させ、口を閉じた。

「す…すみません…!お誘いしたの…私なのに…遅れてしまって…!」
「……」
「あの……戸田先輩…」
「……ぁ…あぁ…別に待ってないから大丈夫だ。」
「でも…すみません…。楽しみで何着ていくかとか色々考えてたら…時間過ぎてしまってて…」

彼女が服装に迷ったというのは、何となくだがわかった気がした。
普段の彼女は学校指定の制服かジャージかの姿しか俺には見せない。まぁ、学校にいる中学生の恰好なんて制服かジャージなのだが。
だから、結ばれてない長い髪に、ピンクのワンピースとジーパン姿はさっぱりした性格の彼女に女の子らしさを与えたような気がした。

(……これが…あの五月雨かぁ…)

とにかく、驚いた。そして、少し目で追ってしまった。いくら珍しいからって少し失礼かもしれないけど、それぐらい威力があったんだ。だから、許してほしい。
それに、「威力」とはいっても別に圧倒して服従させるようなものじゃなくて、胸の辺りがぽかぽかしてくるような温かさがある。

(………普段と違う恰好だから、可愛く見えるんだよな…!うん!そうに違いない!)
「まぁ…時間はまだ全然あるし気にするなよ。それより、今日はどこに行くんだ?」
「……あ…あの…それなんですが……」

俺はその胸の温かさが何なのか考えるのが少し恥ずかしくて、話を逸らす。
すると、彼女は俺から目を逸らした。まるで、その質問はきまりが悪いからしてほしくなかったかのように、言葉を詰まらせる。

「…実はノープランでして…」
「……ノープラン…」
「はい。ノープラン…あははっ……」

苦々しそうな表情をしながら、彼女は強いて笑った。

「五月雨……」
「…す…すみません…!」

俺が口調に重みをつけると、彼女は頭を下げて謝っていた。でも――

「何か目的があったから俺と出かけたかったんじゃないのか…お前は…。」
「も、もちろんです!もちろん戸田先輩とデートするという目的がありました!ありましたよ!でも…!」
「でも…?」
「でも…デートの約束を取り付けるのでいっぱいいっぱいで…何したいかなんて考えてなくて…」
「…」
「ただ…い…一緒に…いたかっただけで……すみません。」

彼女の俺を恥ずかしそうに窺う仕草が、また俺の胸の中をかきまわす。ああ。俺はどうしたんだろうか。
学校での彼女しか知らないからか、彼女の仕草が、言葉が、俺という人間を見失わせる。

(この恰好の所為か……五月雨がいつもより女の子らしく見える…。いや、女の子なんだけど…なんていうか………可愛い…。…って、五月雨可愛いって思った時点で…今日の俺はどうかしている…。あーもうわかんないや…。)
「…ノープラン、なんだよな?」
「はい…」
「…俺と一緒なら何処でもいいのか?」
「はい…」
「…なら、俺んちでいいか?」
「………ぇ…」
「だーかーらー…俺んち。」
「い…行ってもいいんですか…?」
「だって、ノープランなんだろ?仕方ないじゃないか。それに…」
「それに…」
「…俺と一緒なら…いいんだろ?場所は…」
「……は…はい!全然!全然大丈夫です!むしろ嬉しいです!」

嬉しそうに俺を見る彼女。その顔を真っ直ぐに見ることは、俺にはできなかった。

(……くそっ…!何だよ、今日の五月雨は…!)
「ほらっ!行くぞ!」
「はい!」

そして、凄く今更だけど、待ち合わせの場所の時計台には俺達以外の人もいたわけで、俺達の会話が多少は聞こえていたわけで、クスクス笑っていた。
俺はその場にじっとしていられなかった。だから、彼女の手をとって、急いでその場から歩き去ったのだった。

(…たくっ…何で俺…家に誘ってるんだ…。それに…五月雨の手握ってるし…。これじゃあ、まるで恋人同士じゃんか……。)
「戸田先輩…」
「ん?何だ?」
「…ありがとうございます。今日一緒に過ごしてくれて、私嬉しいです。」
「……」

普段から側にいたはずなのに、今まで彼女の何を見てきたのだろうか。

(その場によって態度や主張を変えるのはよくないとは思うけど……俺…五月雨のこと気になってるんだな…。)






..初恋?




END




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テストが終って…イナズマイレブンもFFI編に突入が決定して……これで安心して二次元逃避行できます。どうも、五月雨梓恩です。

今回も戸田夢です。ちょっと短編すぎる戸田夢です。立向居君が大好きな方々、すみません。立向居君溺愛贔屓サイトのはずなのに、戸田君の話が書きやすくて…ついつい書いてしまいます。(文才はヘッポコなのですが…)次は立向居君を書きます。ちゃんと書きます。

でも、戸田に関しては問題が……戸田夢の話だと…どうしても戸田がツンデレになってしまってしまいます。…何ででしょう。笑;
純情そうなのに…若干天然入ってそうなのに…ツンデレしか書けない…!!←とりあえず、戸田に謝れ。
でも、戸田のツンデレは書いていて何か楽しいのでやめません。戸田、ごめんなさい。笑;

さて、中編・長編の部屋を只今作成中です。
夢主設定も無事収拾がつき、デザインも完成しました。直に公開したいと思います。それでは失礼します。

(2010/01/30)


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あきゅろす。
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