『おはようございます、師匠』
今日は26日。
イヴでもなければクリスマスでもない。
独り身の俺にとっては平日と変わらない、しいて言うならケーキが安くなるくらいの価値しかない日だ。
朝から雪が降っている。
東京にしては珍しい大雪だ。
大雪って言っても新潟とか北海道に比べれば、おもちゃみたいな雪なんだろうけど。
「おはよう、凉梨」
クリスマスプレゼントのやりとりなんかもしていない。
それは少し残念だけれど、凉梨も、刃くんも薫ちゃんも、そういうのには疎いからなぁ。
と思いながら、朝食の席に着こうとすると、
「……?」
可愛らしいピンクの包みがテーブルの上に置いてあった。
「……?」
ゴミかな。
捨てた。
『ああっ!!
ああああああああああ!!?ちょ!!師匠ひどっ!!バカバカバカ!!うましかー!!』
「なんかそのセリフすっごいバカっぽいよ。凉梨」
『師匠には趣きとか情緒と言うものがないんですか!!?
空気が読めないんですか!!
ピンクの包み紙って言ったら一つしかないでしょう!!』
「……」
『なぜ考えこむんですかっ!!
クリスマスプレゼントですよ!!』
「……なんで?」
『“なんで”?』
凉梨が急に静かになった。
顔を覗き込むと、“うりゅ〜”と目にいっぱい涙を溜めた凉梨がいた。
涙目どころか泣きそうだ。
どうしよう。
悪気はなかったから俺は悪くないと思うんだけど……これは弱った。
『“なんで”?
師匠は弟子が日頃の感謝を表すのにも理由を求めるんですか?』
「だってさ。今日は26日だよ?」
『それがどうしたんですかっ!!』
キレられた。
刺激しないように優しく言ったのに。
『昨日は忙しかったからあげられなかったんです』
「そんなに忙しかったかな……?」
『……正直に言いましょう。
なんか緊張してあげられませんでした』
「強気デレだ……」
うーん可愛い……のか?
「もらっておくよ」
『……』
「もらいます。もらわせてください。嬉しいから」
『……嬉しいなら、良いです』
「あ、でもお返しとかないんだけど」
『……来年のクリスマスでいいですよ
来年も一緒にいるんですから』
またデレた!
なんかクリスマスでもないのに良い日だ。
昨日の薫ちゃんの“楽しいことはイベントの後に来るものよ”という言葉を思い出して、薫ちゃんはもしかして、凉梨がプレゼントを用意してるの知ってたのかな……と思う。
来年はちゃんとプレゼントを用意しよう。
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