その言い種に多少なりともイラつく。
使い心地――だって?俺も人の事は全く言えないが。

この女。

凉梨達のことを何だと思ってやがる。

「“君が水面野有紀ちゃんを使ってる”くらいには凉梨達は使える駒だよ」

イライラを悟られないように含み笑いで返す。
水面野有紀がびくりと肩を震わせた。

「な、なんでそれを……」

なんで。私が素坂迷理様の実験体だって分かったの?

言いたいことは、まあ、こうだろう。

それを見て呆れたように迷理は「引っかけですよ水面野ちゃん。
貴方が私の研究材料であるということは私の態度を見ればある程度予測がつくでしょう。
全く……こんな簡単なカマかけに引っかかるなんてまだまだですよ水面野ちゃん」と言った。

「で、結局なんの用なわけ?素坂迷理さん。全く君の話は的を得てないよ。風のように適当だ。そんな意味のない無気力な話をするためだけに俺を呼び止めたの?」
「安心してよん折原臨也くん。
私の用事はただ一つ。アレを――」

飄々とした態度で迷理はこちらを睨みながらうなずいた。まだ口は笑っている。

「棚戸三兄弟を返してほしいんだよ」

端的に、迷理は言った。

「アレは私の研究材料だ。
私は研究材料を愛してる。
研究材料ラブ!
どんな出来の悪い材料でも、ね。だからね。棚戸三兄弟は――」

迷理は笑みを消した。

「私のモノ。なんだよ」

素坂迷理は静かに、しかし言い様のない感情を含めて言った。

まるで。宣戦布告でもするかのように。

「捨てた研究材料でも私のモノには代わりない。それを折原臨也、君が良いように使っているというのが我慢ならないのだよ。しかも私より上手く使っている。完全に手なずけている。それが私には我慢ならない。今度こそ。私は上手くやってみせる。棚戸三兄弟を使いこなしてみせる。折原臨也くん。君よりも上手く――」
「馬鹿にしないでくれるかな」

俺ははっきりと言った。もう我慢ならない。

「棚戸凉梨は俺の助手だ」

俺は見せつけるように笑った。

「棚戸凉梨は、棚戸刃は、棚戸薫は、俺の物だ。所有物って意味じゃないよ。助手、だ。
棚戸三兄弟は一人の人間だし、迷理、君に扱えるような人間でもない。棚戸凉梨は俺のだ。
君なんかには絶対に渡さない」
「ふぅん――……」

なるほど。と素坂迷理は今までの熱い表情を引っ込めて、あの透明度のない、冷たい笑みで俺を見た。

「所有欲の強い人間だとは思っていましたけどねぇ……凉梨にずいぶんとご執着のようで。いやーん。うらやましいですよん」

素坂迷理はにやにやと笑った。

「とんだ地獄ですね」



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