仕事から帰ってきて一服していると、部屋のチャイムが鳴った。
誰だ?と思い外に出ると、玄関に血まみれの凉梨がいた。
「ああ?」
右を見る。誰もいない。
左を見る。誰もいない。
上下を見る。当然だが誰もいない。
「……凉梨?」
返答はない。
念のため「刃か?」「薫か?」と聞くが返事はない。
しかし出血量がやばいことは分かった。
凉梨を担いで急いで新羅のところへ行く。
途中、変な目で見られたが警察に職務質問されることもなく(というかこれは現行犯だ)新羅のマンションへ着く。
自分の運の良さを誉めてやりたい。
……まあ、血まみれの凉梨を発見した時点で俺の運の良さはたかが知れてるが。
新羅が珍しくマジな顔をして治療に当たった。
かなり出血量が多いらしい。俺があと30分気づくのが遅かったら死んでいたとか。
セルティが心配そうに廊下を行ったり来たりしている。
新羅が凉梨の処置を終え、部屋から出てきたとき、セルティはPDAにすばやく文字を打ち込んで、おずおずと新羅に見せた。
「凉梨はどうなった?」
「うん。鋭く斬られてたから大半は跡も残らないよ。跡が残りそうなのは目立たない所だから、うん、不幸中の幸いだね」
「あいつ、なんで血まみれだったんだ?」
「さぁ……?」
新羅が手に持った大量の包帯とガーゼを置きながら、不思議そうに説明した。
「「ねぇ、どうしてこんなに怪我したの?」『転んでしまいました!』「明らかに刀傷じゃないか」『転んだ所に大量のガラスが散らばってました!』「両手なんか傷が貫通してるじゃないか」『ガラスが刺さりました』「……」『痛かったです、てへっ』って感じ」
「まぁ僕も深く追求はしないけど」と新羅はちょっと拗ねたようにため息をついた。
気持ちは分かる。
凉梨がこんなになるのは99%臨也のせいだ(1%は凉梨のせいなのだが)。
臨也絡みになると凉梨は俺らに相談もしない。
それが、嫌だ。
もっと、頼ってくれればいいのに。
変な所で頑固で強情なんだ。こいつは。
ベッドで寝ている凉梨に近づく。
ぐっすりと眠っているが、顔はまだ青白い。
「……無茶するなよ」
しかし、それを言う権利はまだ俺にはない。
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