セルティの首をくっつけた女の子には記憶がありませんでした。
らしいっちゃらしいですが、セルティの首を死体にくっつけた?
セルティから聞いた新羅さんの推理はあまりにもあまりで聞いていられませんでした。
そして、言い様のないモヤモヤ。
セルティが好きな、新羅の言い分もわかります。
いえ。僕ごときにその愛が理解できるとは思いませんが、セルティと一緒にいたい新羅さんの気持ちも、首を取り戻したいセルティの気持ちも、同じくらい尊重されるべきものだと思います。
両立できないのが、辛い。
そう考える僕はまだ甘いのです。
愛とか、恋とか、分からないからそんなことが言えるのです。
『まぁ。先なきことですよね』
うそぶいて、立ち上がる。
昨日は帝人くんのところに行きました。
そして女の子とセルティを合わせてみました。
あの首がセルティのものでも、ただの勘違いでも、話はそれからだと思ったのです。
でも、女の子はいなかった。
セルティと師匠に会った竜ヶ峰帝人くんは、そして。
「凉梨ー」
『あ。師匠。久しぶりですね』
「毎日会ってると思うんだけど」
『すみません。なんか久しぶりな気がしたんです。正確には5、6ページくらい?』
「……なんの話?」
師匠が不思議な顔をしたところで、「あーっ!!」という可愛らしい声が聞こえました。
最近よく悲鳴とか叫び声とかを聞く気がしますが、気にしないことにしましょう。非日常は、すでに僕の中では日常です。
「凉梨ちゃんだねっ!それに臨也さんも久しぶりなんですねっ!!」
声の主は阿木六乃ちゃんでした。
「あれ?あれあれ?二人ともここにいるってことは……」
そして六乃ちゃん、辺りをきょろきょろと挙動不審に見回しながら、口に手を当てて小さな声で言ってきました。
「ダラーズの集会に来たんだね?」
『はい』
「お二方とも、ダラーズのメンバーだったんだね。知らなかったんだねっ!」
『まぁ。秘密ですけど』
六乃ちゃんはケータイを指差して笑った。
「メールで。回ってきたんだっ!
“某日某時ダラーズの集会オーケィ?”ってね!」
『そんなふざけたメールではなかったと思いますが』
「とにかく二人に会えて安心なんだねっ!
緩橋秋ちゃんはこーいうの嫌いだし鳩場時雨ちゃんは電子危機に疎い一般人だからダラーズとか知らないしねっ!
私、ぼっちだったんだねっ!」
僕も六乃ちゃんにつられて笑います。
六乃ちゃんは今度は師匠に向き直りました。
「臨也さんっ!お久しぶりですっ!」
びしっと軍隊風の敬礼を決めて、六乃ちゃんは無邪気に師匠にも笑いかけた。
正直、驚く。
あの折原臨也にこれほどまでの純度100%の正の感情を向けられる人間は、初めて見た。
それは、僕らにもできなかったこと。
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