だから俺は人が殺せるし俺もそれでいいと思っている。

特定の人を好きにならず、
特定の人を嫌いにならず、
特定の人に関心を持たず、
特定の人に感情を持たない。

ただただ人と関わって、

みんなを好きで
みんなを嫌いで
みんなに興味があるけど
みんなに感情を排除して付き合う。

これが俺の強さだと思うし強みだと思うし強がりだと思う。

例えば隣にいる……狩沢あたりを殺せと命令がくだるとする。

俺は殺すだろう。

「狩沢のことは好きだけど、殺さないほど好きなわけじゃない。」

そんな俺は、棚戸三兄弟殺戮担当棚戸刃。

生きているものならなんでも。
舐めるように殺して愛するように殺戮する。

棚戸三兄弟。殺戮担当棚戸刃。

『……』

くだらないことを考えているうちに目の前の男が覚悟を決めたようだ(それはいささか自暴自棄であるとも言い換えられる)

目をつむって本を一冊掴み取った。

それは女の子の人形の絵が描かれた暗い表紙の本だった。

「あー。それを選ぶなんて勇気あるねー」
『ハイじゃあ遊馬崎、準備ー』
「100均の傘っすがいいっすよね」

遊馬崎が男の首を羽交い締めにして固定する。

そして、男の左目をいっぱいに見開かせる。

これで男は動くことも目を閉じることもできない。

そのいっぱいに開いた目に――狩沢が傘の先端を近づけた。

「リアル白木菜深ちゃんっすね!」
「さぁ“えぐられた左目を探して歩き回ろう”!!」
『運が良けりゃー違う人の記憶が見れるようになるよ』
「!!」

男は恐怖に満ちた表情で暴れるが遊馬崎の力は思ったより強いらしい。

「ま、待て待てっ!!お前らっ!!狂……っ」
『にしし。狂ってなんかいないよー俺は。でもそこそこの誉め言葉だありがとう!』

先端がどんどん左目に近づいていく様を心の底から楽しそうな笑顔で俺は見つめる。

「刃くん。私たちは狂ってるんだよ?だって本は悪くないもん。よく本に影響されて殺人をおかしましたーって人がいるけどそれは間違い。影響なんか受けてない」
「そーっすよ」
「狂ってるのは私たち」
「狂ってるのは俺たち」
『狂ってるのは俺ら』

くすくすくす……と三人の笑い声が重なる。

『さ。優しく愛してやるから迅速に死ね』

男の聞き苦しい悲鳴が上がったところで、傘の尖端が目に触れそうになったところで、――ワゴンのドアが開いた。

「お前らなにやってるんだ」
『ドタチン!』
「本を血で汚すなよ」

男は中断された拷問に息も荒く安心しているが、ドタチンは救世主なんかじゃなく“とどめ”だってことに気づいていない。ご愁傷様。



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あきゅろす。
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