「正確にはこの腹の傷のお礼かな?ああ、別にケンカするつもりはないから。
本当は無視しても良かったんだけど舞ちゃんがうるさいからさぁ。
ま。君にも興味があるしね」
興味?また興味?
知らない。そんなものは知らない。
雨がいっそう強く降りました。
『あ。そう。じゃあ殺す』
「君ってシズちゃんに似てるねぇ……シズちゃんより好きだけどさ」
『うるさい!!』
刃くんは爪を立てて折原臨也に襲いかかります。
折原臨也は少しずれるだけでそれを避けました。
『ううう……うう』
刃くんが唸る。
折原臨也は馬鹿にしたような笑み混じりで、獣みたいだねと言った。
(刃くん、替わってください)
(ああ?凉梨、俺よりケンカ弱ぇじゃん)
(でも折原臨也と刃くんはすごく相性が悪いですよ。替わらないと負けます)
(あーハイハイ。たしかに凉梨の言うとーりだよ。じゃ、俺寝るからあとヨロシコ)
僕は立ち上がる。
雰囲気の変わったのを感じとったのか折原臨也が懐からナイフを取り出す。
「凉梨ちゃん……かな?」
『棚戸凉梨です』
ぎろりと僕は折原臨也をにらむ。
『臨也さん』
「ん?」
『あなたは馬鹿です』
折原臨也は笑みを崩さず首をかしげる。
子供っぽい表情に僕は眉根を寄せる。
『馬鹿じゃないんですか?
そういえば迷理さんに飼われていたとき“絶対にこうなるな”と言われた人が何人かいましたよ。
一人目は平和島静雄さん。二人目は……貴方でしたよ。折原臨也さん』
「そりゃ光栄だ」
『ちゃかさないでください』
ぎり、と歯を食いしばる。怒りから。
雨は先ほどの勢いを弱めて優しく降り注ぐ。
ぼんやりと霧のような小雨。
今はその優しさすらうっとうしい。
怒りを通りこして無気力に僕は立ち尽くす。
折原臨也は構えたナイフをおろそうとしないまま笑顔で立っている。
殺してやりたい。
「結局さぁ、」
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