セルティが凉梨ちゃんを見つけたらしい。
「こんなに早く見つけたのはセルティのおかげだよ。感謝してよね。臨也」
これは新羅のセリフ。
「凉梨という子は中央公園を根城にしているらしい」
セルティは素早くPDAに文字を打ち込む。
「刃と薫って子は傍にいなかったみたいだけど、別行動でもしているのか?」
凉梨ちゃんが多重人格であることは2人には意図的に伏せてある。
“そうした方が後でおもしろいことになりそう”と思ったからだけど。
「分からないよ」
「本当に凉梨ちゃんって子のところに行くの?」
新羅が呆れたといった風につぶやいた。
「傷がまだ塞がっていないうちにその傷つけた張本人に会いに行くなんて馬鹿らしいよ。舞ちゃんのことなんて無視すればいいじゃないか。今度こそ本当に殺されるかもしれないけど。
でも舞ちゃんを無視するのも凉梨ちゃんのところに行くのも危険度は変わらないよね」
いいんだよ。新羅。
「何がいいの?」
「こうなるのは“分かってた”から」
新羅がぽかんと口を開ける。
セルティはそのヘルメットから表現はわからなかったが、同じような感情を持っているはずだ。
「分かってた、って」
PDAを見せる。
「刺されることまで想定内だったのか?」
「うーん。刺されることは、もしかしたらそうなるかもなぁってレベルだったけど」
俺は笑って続けた。
「凉梨ちゃんは会社から“裏切るな”って教育は受けていただろうからね。
会社が潰れたからって俺に簡単になびくことはないだろうなって思ってた。
刺すくらいの抵抗は見せるだろうさ」
「でも……舞ちゃん達が来なかったら、臨也は死んでたよ?」
「それも想定内」
もっともな新羅の意見に俺はどう説明しようかなぁと思っていた。
俺は論理立ては得意だが(シズちゃんあたりなら屁理屈と言うのだろう)説明は苦手なところがあるのだ。
なんとなく。順序立てて説明するのが面倒というか……。
とりあえず。結論から。
「舞ちゃん達を会社のあの俺が刺された場所まで呼んだのは、俺だから」
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