その後は特に話すこともなく二人で黙々とポトフ(?)を食べた。

凉梨もいつもなら嬉々として1日の報告をしてくるのに何も言わない。思うところがあったのだろうか。

だとしたら“思うところ”は死後の世界だろうか?それとも自殺オフだろうか?

凉梨はいつもは厳しいことも言うくせに弱い奴や困っている奴にすぐに感情移入するのだ。

悪い癖だ。直すように言ってるのに本人に自覚がないあたりさらに質が悪い。

最初に会ったときから凉梨はそうだった。

そう考えるとまだ刃くんや薫ちゃんの方が可愛げがあるくらいだった。

凉梨も俺もくだらない話に花を咲かせることが好きだから会ってから今まで色々な話をした。

人の生き方から死に方まで。

だが凉梨は自分の癖を変えようとはしなかった。

殺すことは悪で、自ら死ぬことは罪で、死ぬことは生の延長線。そんな中学生のような甘ったるい青臭い考えを当たり前に持っていたのが凉梨だった。

素直なのかもしれない。しかし俺はそうは思わない。

凉梨の“素直”は“教育”なのだ。

刃くんと薫ちゃんが(製作者のエゴのために)歪んだ性格にされた、その反動で凉梨は素直な性格になったにすぎない。

つまり殺し屋としての仕事をこなす刃くん達のバランスをとるために凉梨がいるのだ。

刃くんだけじゃどうにも“操作”がしにくい。

だから素直で聞き分けが良くて従順で性格の良い凉梨を表に出しているのだ。

こういう風に考えていると凉梨と初めて会った日を思い出す。

――“さよなら、師匠”

あれは俺がさる有名会社の壊滅に仕事で関わったときだった。



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