紀田正臣くんは黄巾賊将軍で三ヶ島沙樹ちゃんは折原臨也の取り巻き。
普通のカップルになるはずがないと思いながらも僕は二人を応援していました。
『ねぇ、臨也さん。
貴方あの二人とブルースクウェアと黄巾賊を使ってなにをするつもりなんですか?』
臨也さんは座っていた椅子をくるりと回転させて僕に顔を向けました。
「俺のことは師匠って呼ぶこと。
何度も言ってるだろ?
――そうだね。
彼らを使って事件を起こしたらそれは楽しそうだね」
『お願いしますから、僕は巻き込まないでくださいね。
ガキのケンカに首突っ込むなんてごめんですから』
「クールだねぇ凉梨は。
クールヤンデレとか流行ると思わない?
クールヤンデレが素直ヤンデレに成長する物語とか遊馬崎ウケしそうだけど」
『なに馬鹿なこと言ってるんですか、臨也さん。
僕が素直ヤンデレになんかなるはずないでしょう。
ええ!天地がひっくり返っても!』
「そう力強く言われるとなんかの伏線っぽいよね。
あと臨也さんじゃなくて師匠。
忘れないでよ」
『臨・也・さ・ん』
不機嫌そうに僕はわざと、一文字一文字言って眉を寄せる。
『沙樹ちゃんも紀田くんも悪い子じゃないんですから。社会の闇に引きずりこんだら悪いですよ』
「悪い子じゃないって。含みのある言い方だね?
良い子ではないみたいだ」
『ええ。
欠点がありますから』
「欠点?」
『臨也さんを慕っているところです』
わざわざ目を反らして言ってやった。
「凉梨だって俺に従ってるじゃないか」
『フリです』
「フリなのか」
キツイ目にも動じることなく、いつも通りの人を小馬鹿にした瞳で臨也さんは笑いました。
「じゃあ凉梨は俺に死ねって言われても死なないんだね」
『ええそうですよ臨也さん。
貴方の周りには貴方の駒と貴方を嫌いな人しかいませんから。
私はそのどちらにもならずに、貴方の傍で生きていましょう』
臨也さんが初めて笑顔を崩しました。
驚いたような顔。
思いもよらない顔。
それも幻覚のようにすぐ消えて、臨也さんは顔の前で指を組んでおかしそうに「それってさ、」と言います。
「棚戸凉梨は俺が嫌いじゃないってことかな?」
どこか嬉しそうなのは演技か。
『嫌いにならないよう努力はしてるんですが』
僕はため息をついた。
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