待ったをかけたのは、棚戸凉梨だった。
「おい。凉梨、なんだよその恰好。
包帯まみれじゃねえか」
『いや、サイケちゃんが、ぐるぐる巻くもんですから』
なんとなく泣きそうな顔でやるもんだから、止められなかったんです。
と、凉梨は複雑そうな顔をする。
包帯だらけのその顔で凉梨は、俺たちに近づいてきた。
『僕も行きますよ。
同行させてください』
「凉梨ちゃん……怪我、してるじゃない……」
『どうってことないです。
歩けますし』
「凉梨、怪我してるのか?」
PDAを見せてきたのはセルティ。
「だめだ。
罪歌は危険なんだ。怪我人は連れていけな」
「――いいんじゃねえか。連れていっても」
セルティのキーを打つ手を止めたのはシズちゃんだった。
「イリヤもいいと思うな……。
凉梨ちゃんは、この事件に関わるべきだもの……」
和して、イリヤさんはこちらを向いた。
「凉梨ちゃんの“今の”保護者は臨也くんなんだし、臨也くんが決めて……?」
「……」
――臨也くんが決めて。か。
俺の計画からすれば、凉梨には家で大人しくしていてほしいんだけど。
計画はうまくいってるのに、凉梨に関わられたら、また不確定要素が増える。
それも面白いけど――。
凉梨の真っ白い包帯を見る。
(俺の気持ちはこんなところか、)
1.事件をひっかきまわしたい
2.凉梨が怪我すると困る
(うん。どちらを選ぶかってことか)
俺は、そして、答えを出す。
「いいんじゃない?
行きなよ。凉梨」
俺は凉梨の怪我より事件をひっかきまわすことを選んだ。
それが、俺の人間関係の限界。
結局、俺は人間が好きだけど人間を大切にはできないってことだ。
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