「貴方のような殺し屋と関わっているヒマはないの。
――そうでなくても殺し屋なんて愛せないのに」
『――どうしてですか?』
「人を殺すからよ」
くるりと罪歌は俺たちに背を向けた。
「殺すだけで人を愛せないだなんて。
気が合わないどころじゃないわね。
その行為には嫌悪すら感じるわ」
『そういうところも愛してくれるのが罪歌なんじゃないですか?』
「あら。愛されたいの?」
『全身全霊お断りですよ』
なんだか話に聞いていた罪歌とは印象が違う。
罪歌に操られた子供だから性格が違うのだろうか?
そういやまだ贄川春奈にも会ってねぇな。
『貴方に愛されたくなんてない』
このまま罪歌を逃がしたら、なんでかは分からないけど、静雄と杏里に危機が迫る。
それを阻止したくて、だらだらと会話を伸ばす。
『それに愛せないだなんて心外ですね。
僕らにだって好きな人たちくらいいるんですよ』
「――ふっ」
罪歌が堪えるように笑いだす。
口を押さえて、それでも堪えきれなかったのか、背中を反って笑いだした。
「あははははははははははっ!!
貴方が人を愛する?
馬鹿らしいわ。
貴方は本物の愛を知らない!」
『――愛に本物、とかないと思いますけど』
「あるわよ。
それを本気で言えないうちは、人を愛しているだなんて言えないわ」
うっとり。と罪歌は包丁を撫でた。まるで大事な自分の子供を慈しむように。
「愛ってね。もっともっともっと熱いものなのよ?」
その言葉を最後に罪歌は歩き出した。
追おうとした凉梨を遮るように有紀が間に入る。
「行かせません」
『――まったく!ままなりませんね!』
有紀がナイフを取り出す。
凉梨はゆっくりとネクタイを引っ張った。
『一応聞いておきましょうか。
下半身を殺されるのと上半身を殺されるのどちらがいいですか?』
挑発の言葉に、有紀は無表情で静かに答えた。
「貴方を殺してから考えます」
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