学校で、罪歌の情報を得ようと、まずは斬り裂き魔に遭遇したと言う杏里ちゃんの話を聞くことにしました。

「あの時は気が動転していたので、何も覚えてないんです……、すみません」

杏里ちゃんと別れた後、僕は一人で(三人で?)首を捻りました。

『斬り裂き魔の情報は得られませんでしたね』
(馬鹿ね、凉梨)
『お姉ちゃんは何か気がついたんですか?』
(園原杏里は嘘をついているわ)
『えっ?』

嘘をついている?杏里ちゃんが?

『さすが棚戸三兄弟参謀担当ですね。
何がわかったんですか?』
(……ねえ凉梨。
その棚戸三兄弟なんとか担当ってすごく恥ずかしい名称、止めない?)
『?
なんでですか?僕は交流担当だし刃くんは殺戮担当だし薫ちゃんは参謀担当じゃないですか。分かりやすいし、的確な呼称だと思えますけど』
(……そうね。
なら、参謀担当として言わせてもらうわ。
園原杏里は嘘をついている。
思い出してご覧なさい。
園原杏里は女子と向かいあって話していた。
その子が斬られた。
なら、彼女は斬り裂き魔を正面から見ていることになるのよ)
『顔を覚えているかもってことですか?
で、でも女の子の影になって見えなかったとか――』
(顔じゃないわ。ちょっと考えなさい。
凉梨は斬り裂き魔に会ったから見ているでしょう?)
『ええ。2回も会いました』
(ならおかしいとは思わない?)
『……えっと』
(顔よりももっと特徴的なところがあるでしょう。“斬り裂き魔には”)

顔よりも特徴的なところ?

僕は二回会った斬り裂き魔を思い浮かべ――あ。

薫ちゃんはたっぷりためてためて、はっきりと言いました。

(そうよ。
斬り裂き魔は“赤い目をしている”)

あの紅く光る目。

人工では決して出せない光。

(あの赤い目は遠くからでもすぐ分かる。
なら。正面にいたなら尚更ね。
それを、斬り裂き魔と判別する特徴と言わずしてなんなのかしら。
あんなにわかりやすい目印がありながら、警察にも凉梨にもそのことは一言も話していない)
『……“意図的に隠した”?』
(もしくは、言えない事情があるか)



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あきゅろす。
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