後日。
新宿。
折原臨也のマンション。

『ふ……』

俺が、いつも通り、ムカつくことがあったから、臨也のマンションまで行ったら聞こえてきたのはそんな声だった。

『ふはははは!いい度胸です!ええ、いい度胸ですよ師匠!
池袋にその名を轟かす殺し屋棚戸三兄弟の交流担当、棚戸凉梨をあろうことか縄で縛るだなんていい度胸です!』
「……」

凉梨が言った通り、凉梨は部屋の真ん中で芋虫もかくやと言った様子で縄でぐるぐる巻きにされていた。

親の仇かと思うくらい胸元から足先まで縄で巻かれているので凉梨は身体をくねらせてささやかな抵抗をするしかない。

息が荒いのできっと朝からその状態なのだろう。

「大丈夫か、凉梨」
『あれ?シズちゃんさん?』
「シズちゃんさんって呼ぶな」

呆れ声で俺は言って、まず最初に見た目から、当たり障りのない質問をすることにした。

「なにやってるんだ?」
『朝に起きたらこの状況だったんですよ……』

凉梨は普通に答えた。

へこんではいないらしい。
良かった。これがノミ蟲の虐待とかだったら今度こそ俺はあいつを殺していたかもしれない。

『ほんと、昨日の夜はなんだか眠くて、偶然、僕の眠りが深くなかったら。
師匠にこんなことされたらいつもなら気づくのに』
「……凉梨。臨也は昨日の夜、お前に飲み物を出したりしなかったか?」
『ええ。なんか知りませんが夜にココアを作ってくれましたが、それが?』
「たぶん睡眠薬いれられたぞ」
『えー!!?』

びょんっと芋虫が飛び上がった。

……いや。凉梨が驚いただけだけど。

臨也がノミ蟲で凉梨が芋虫……。それはどうなんだ。

『師匠ってば!』

きー!と効果音が付きそうなほど悔しがってる凉梨に(どうして気づかないんだ……)と思った俺。

『ま。いっか』

ふーとため息をはいて凉梨はぐねぐね動くのを止めた。

『あ。シズちゃんさん。今日はどうしてここに?』

芋虫うにうに→仰向け→首だけ曲げて俺を見てくる。
怖い。

「あーいや、たいした用じゃねぇんだが。
臨也の野郎をブチのめしにきただけで」
『ああ。いつもすみません。師匠がまた何かしたんですね』
「凉梨のせいじゃねえよ」
『師匠なら今日はお出かけですよ』



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