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白雪姫
赤瞳の白雪姫4
民家には人がおらず、その上鍵がかかっていた。
仕方なくレッドはドアの前で夜を明かすことにした。

目の前が明るくなってきているのはわかったが、もう少しこのまどろみの中にいたい。昨日はずっと歩きづめだった。

だが遠くからうっすら人の声が聞こえてきた。


「だから馬小屋もおこうっていったじゃないか」

「好きにつくりーていうたやん。」

「すぐ横に街道があるからやっぱいらないんじゃなかったの?」

ああ、起きなきゃ、


レッドが目をあけると、
街道側に設置してある塀を飛び越えてくる人物と目が合った。

「!?」

その人物はレッドをみて驚き、塀に足を引っ掛けて着地を失敗した。

うわ、痛そう。

「ぃって!」

少年といって差し支えのない年齢に思えた。
おそらく自分と同じくらい。
どうやら右腕をぶつけたらしくおさえている。

「グリーン!?どないしたん!大丈夫か!手首ひねったん!?頭打ってないか!?1+1は!?」

「に。」


あ、なんかやたら心配性そうでやかましい訛りの強い男がきた。

「これ何本!?」

「に。あれ、お前誰だ?」

「マサキや!!どあほう!!」

「違うわよグリーン、この人はタカシさん。」

「ナナミさん誰やそれ!!」

右腕をぶつけたのがグリーン、
やかましいのがマサキ、
柔和な女性がナナミであるらしかった。

「―――で、」

そこで三人の視線が一気に自分のほうを向いた。
敵意をも含んだ6つの目に身がこわばる。
よく見れば三人とも腰に剣をさげていた。

「お前は本当に誰だ?」

グリーンと呼ばれた少年が、先ほどの衝撃で落ちた剣を肩に担ぎながらレッドに問う。

「こんな森の奥でいったい何を?」

どうやらこの三人の中で主導権は一番年少と思われるグリーンにあるようだった。
マサキとナナミは事の成り行きを黙ってみている。

「いやおれは、家出中で、えっと、人通りの少ない道を―――」

グリーンは剣を―鞘がついたままだが―レッドのフードにあて、一気にうしろに下ろした。

「あ、」

三人の目が見開かれる。

グリーンの切れ長の緑色の瞳がレッドの赤い瞳を見据えた。

「……変わった目の色だな」

「よく、言われる……」


しまった。
一番隠しておきたいことが。

「あ、そうだ。」

話をそらそうとレッドはグリーンの右手に目を向けた。

「あんたさっき右手痛めたろ?」

「…それが?」

「おれ、薬剤師なんだ。湿布とかあるからよかったら…」

「ふーん」

グリーンは目を細める。
面白がっているような、人を見定めているような、好奇の視線だ。

「いらない」

グリーンは下ろしていた剣の先端をレッドのむけた。
鞘に収まってはいるがやはり気分のいいものではない。

「毒かもしれないものをいきなり差し出されて使うと思うか?俺は森の小人じゃないんだ。あっさりと他人を信用するわけにはいかない。」

「………。」

「つまりお前に用はない。わかったらもう行け。」

まあ、確かにそうだけど。

レッドは自分がいら立っているのを自覚した。

なんなんだ昨日から。
上からものをいう人間ばかりで。

少し、やかましい

いまだ向けられている剣の先端をレッドはつかんだ。

「お、なんだ、やるのか?」

そしてその剣を自分の右腕に、

思いっきり打ちつけた。

「!?」

「…ッ」

ちょっと、やりすぎた、かも、いってぇ

レッドは周りが唖然としているのをほっといてそのまま自分の鞄をさぐる。

あった、湿布薬。

「あいにくと、」

この薬を患部にぬって、布をかぶせる。

「毒を持ち歩く趣味はないんだ。」

グリーンは剣をおとしてしまった。


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あきゅろす。
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