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HAPPY BIRTH DAY KIRA!!
愛しさと、幸せと、
5月某日。
春の陽気から幾分日差しも強くなり、初夏香る季節に移り変わりつつある地球圏内「オーブ連合首長国」では、この国の代表首長であるカガリ・ユラ・アスハの、生誕祝賀パーティーが行われていた。
その大規模なパーティーに招待された各国の代表の中には、宇宙巨大コロニー「プラント」の現最高評議会議長であるラクス・クラインと、その護衛である“彼”も、無論招待されていた。



日もすっかり落ち、時刻は19時を指している。
会場であるアスハ邸では、綺麗に着飾ったスーツやドレス姿の招待客がアルコールを口にしながら、主役であるカガリを祝っていた。

そんな中、一際目を引く男女が一組。
普段は背に流れている桃色の柳髪を今は綺麗に纏め上げ、上品なドレスに身を包んでいる女性は、プラント現最高評議会議長その人である。
そして、その横でさり気なく彼女をエスコートしながら、白いスーツを着こなし柔らかな笑みを浮かべている男性は、今や知らぬ人はいないであろうと言うほどの、かの戦争の英雄。伝説とまでされたフリーダムのパイロット。
そして現在は、ザフト軍白服を纏う、優秀な指揮官である。
まるで、肖像画から抜け出してきたかのような別世界の空気がそこにはあり、美男美女の一枚の画が完成していた。

「…なんであんなにお似合いなんだろう」

その姿を見つめながら、小さな呟きをこぼした女性が一人。
彼女も今夜のパーティーに招待され、その身を綺麗なドレスに包んでいる。
だが、その表情はどことなく暗い。

「キラ…」

愛しい人の名前を呟きながら、完璧すぎる恋人同士のような雰囲気を醸し出している二人を前に、First Nameは顔を曇らせた。
プラントの議長であり、国民的カリスマアイドルでもあるラクスに嫉妬してもしょうがないのだけれど。
小さな溜息を零し、どうしたものかと壁に背を預けようとした、その時。
凛と、よく通った声に呼びかけられた。

「First Name?First Nameだよな?」
「カ、カガリ…」

金髪に琥珀色の瞳。 まるで太陽の化身のような眩い明るさを放ちながら、こちらに向かってくるこのパーティーの主役。今日は彼女もドレス姿だ。
しかし、着慣れないドレスを煩わしそうに捲り上げながら歩く姿に、First Nameは小さく噴出した。
純粋で正義感が強く、気丈でその辺の男なんかよりもずっと勇ましいオーブの姫。

「来てくれたのか」
「うん。お誕生日おめでとうカガリ」
「ああ、ありがとな」

心底嬉しそうに、それこそ太陽の鮮烈な輝きにも似た笑顔でお礼を言われ、First Nameは一瞬眩しそうに目を細めた。
しかし、あることに気付く。良くも悪くも、この琥珀の色彩は目立つ。

「First Name」
「カガリさん」

先程会うのを躊躇っていた二人に早くも声をかけられ、First Nameは苦笑するしかなかった。

「お久しぶりですわ。お誕生日おめでとうございます」
「ラクスもキラも、元気そうだな」
「うん。おめでとう、カガリ」
「そういうお前も誕生日だろ。おめでとうキラ!今年は双子のお前とこうして誕生日が祝えて、お姉ちゃんは嬉しいぞ!」
「ちょっ、痛いよカガリ」

バシバシとキラの肩をたたきながら豪快に笑っているオーブの姫君に、First Nameとラクスは苦笑を禁じ得ない。
変わらない双子の姿が微笑ましい。

「キラ…」
「First Nameも、久しぶり」
「……うん。会いたかった」

向けられた笑顔に、First Nameは胸がきゅっと締め付けられた。
やはり、彼が愛おしい。こうして彼に名前を呼ばれ間近に顔を見合わせれば、何よりも愛しさが先に立つ。
暫し無言で見つめ合う二人に、瞬時に察したラクスはカガリを連れて静かに席を外した。

気を利かせてくれた桃色の後ろ姿に、キラは内心でお礼を言い、再び柔らかい笑みを目の前の最愛の人へと送った。

「First Name、そのドレス似合ってるね」
「…キラこそ」

反則なくらい格好いいわ、と頬を染めながら言うFirst Nameに、キラは我慢できずにその華奢な体を自分の腕の中へ閉じ込めた。

不意打ちに慌てるFirst Nameに、小さく笑いながら、けれども逃がさないとでも言うように、キラは優しく抱きしめる。
ここが公衆の面前であることも忘れる程に、彼女の前では抑えが効かない。
愛しくて愛しくて、たまらない。ずっと会うことが出来なかったのだから尚更。

「キラ…」

顔を赤らめながらも、答えるようにFirst Nameの腕はキラの背中へと回された。
キラは溢れんばかりの想いをぶつけるように、更にその抱擁を強めながら幸せを噛みしめていた。

自分の出生の秘密を知ったのは、16歳の頃だったか。数多の命を犠牲にし、その上に成り立ったこの身がたとえ禁忌であるとしても。
生き続けることを望み、彼女に出会って。

「……生まれてきて、僕は幸せだ」

小さな呟きと共に、キラはFirst Nameを静かに解放した。
見つめ合う二人の眼差しはどこまでも愛しさを含んでいる。

「キラ、生まれてきてくれて、ありがとう」

First Nameは綺麗に笑いながら、彼がこれからも幸せでありますようにと祈りを込めて、キラへ祝いの言葉を贈った。





「誕生日、おめでとう!」









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