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夢で見たものは…?



朝目が覚め、もぞりとハチの布団へと潜り込む。自分の布団はどうも昨晩のうちにはしゃいでいたらしく、足元の方でぐちゃっと丸まっていた。
まだ起きるには早いし、この時期の朝は驚く程寒い。寝ているハチの腕に体をくっつかせ、再び目を閉じれば、溜息が一つ聞こえた。

「お前…何やってんの」

「寒いんで温もりを探しにちょっと」

「だからって人の布団に入るなよ。ガキじゃあるまいし」

「ん、でも寒いものは寒い」

「………はぁ」


また溜息が一つ零れた。ハチは諦めたのか体をずらしスペースをとってくれる。それに従って更に体を寄せれば、先程よりも多く感じる温もりに自然と頬が緩んだ。

「なぁハチ」

「ん?」

「ありがと」

「おぅ」

小さく頭を撫でられ、本格的に眠気が襲ってくる。それに抗うことなく意識を沈めるとすんなりと眠りにつくことが出来た。






















「………ぃ」

「んっ………」


誰かの声が聞こえ、小さくうめき声をあげる。

「…きろ……起きろっての!」

「ぉあっ!…さむっ!」

その声が突然大きくなったと思ったら、いきなり布団を引っぺがされた。外気の寒さに思わず飛び起きると、少々ご立腹気味のハチが布団を持って立っている。

「おはよ…」

「おはよ、じゃねーよ。もう放課後だ馬鹿。保健室に運ばれたから驚いて来てみたってのに、お前ってばよだれ垂らして寝てるし」

「えっ嘘、よだれ垂らしてた!?」

「くっきり跡がつくくらいな」

「うっわー、俺ってばはっずかしー」

バッと手で口元を触ると確かにざすざすしている。これは顔洗わないと…。

「睡眠不足でぶっ倒れるなんて、お前また遅くまでゲームしてたんだろ」

「ぅっ………」

「図星だな。よし、今日からお前の部屋のゲーム一週間没収」

「はぁっ!?マジで!?」

「マジだ。お前はこうでもしないと止めないからな」

「……オカンかよ」

「弥江が子供なんて絶対嫌だぜ、俺」


俺もこんな男前な母ちゃんやだけどさ。


「あーぁ、夢の中のハチは優しかったのになぁ」

「冗談。俺は今でも十分優しいだろうが」

「ゲーム没収する奴を優しいとは言いません……ぶっ」


べっと舌を出せば、勢い良く顔面に布団がクリーンヒットした。これは地味に痛いぞハチ君よ。
頭を振って布団を落とすと、今度は膝の上に鞄が乗せられる。


「ほら、元気になったならさっさと帰るぞ」

「あっうん、ちょっと待って」

スタスタと扉に向かうハチを追い掛けるように慌ててベッドから床へと立つ。
いきなりでちょっとフラついたけど、これは寝過ぎたせいだろうから大丈夫。

扉を出て閉めた頃にはもう夢のことなどすっかり忘れていた。
覚えているのは、ほんの少しの懐かしさだけ。









(ん?懐かしい…なんてどうして思ったんだろう)


あきゅろす。
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