祭といったら…
雷蔵と兵助がバイト終わる時間は同じなので、二人が終わる頃に近くの公園のの前で集合しようとメールをいれた。
公園だったら二人が来るまでに時間も稼げて一石二鳥だ。祭から少し離れた場所だったけど、それでも太鼓の賑やかな音は聞こえてきて尚更気分は盛り上がる。
行くまでは祭に興味なんて全く無かった三郎も、外まで出れば気が変わったのかそわそわと雷蔵達を待っていた。
「アイツら早く来いよな…生クリーム二倍が終わったりしたら絶対許さねー」
……………前言撤回。待っているのはクリームだけみたい。とは言うものの、祭に行きたいのは俺も同じなのでさっきからブランコの回りをぐるぐる歩いてみる。するとウザったかったのかハチに腕を引かれ隣のブランコに無理矢理座らされた。
「お前ちょっと落ち着いとけよ。そう焦っても早く来るもんじゃないって」
「だってさー」
「だってさー、じゃねぇ。ほら、ガムやるから我慢してろって」
「………はーい」
まだちょっと言いたかったけどハチが笑顔でガムを差し出してきたから大人しく受け取っておく。あ、これめっちゃ辛い奴だ。
ガムに気付いた三郎がハチに向かって手を伸ばす。
「ん」
「え?あぁガムか?…あー今辛いのしかないんだよなー…」
「げ、最悪」
辛いと聞いて三郎の顔がみるみる歪んでいくのが分かる。お前どんだけ辛いの嫌いなんだよ。ガムなのに駄目なのかよ。
なら要らない、と手を引っ込めた三郎にハチは苦笑を零したと思うと、ごそごそとポケットの中を漁り出した。少しして何か目当ての物が見つかったのかハチはおもむろに立ち上がり三郎の前まで歩いていく。
「何だよ、辛いのならいらねーって」
「違う違う、三郎にはこっちやるよ…ほら」
「んぐっ」
何なのか気になって体をずらして見てみると、三郎の口に突っ込まれてたのはどうやら飴らしい。…ハチさん、何故お前はお菓子を持ち歩いているんですか。
「……何これ、超うめぇんだけど」
「ミルクセーキ味だってさ。駅前で配ってたの貰ったんだけど甘くて食えないからさー、俺」
「食えないのに貰ったのかよ」
「だって配り終わらないと帰れないなら、貰ってあげないといけない気分になるだろ?」
「俺はなんねー」
本当ハチってばお人よしだよな、なんて感心して聞いてると、座ってたブランコがいきなり後ろに揺らされ思いっきり体勢を後ろに崩された。
「っおわぁ…………!」
とっさに俺は目をギュッと閉じて来るだろう衝撃に身構える。え、何、どっかの悪ガキでも悪戯に来やがったのか!?
落ちたら絶対一発殴ってやる!と思っていても中々来るはずの衝撃は来ない。その変わりポスッと音がしたと同時に肩をガッシリ掴まれた。
「あはっ、弥江の声凄かったね。そんなにビックリした?」
「…………へ」
「雷蔵、弥江は鈍いんだから驚きもしなかったんじゃないか?」
「何ですと?」
聞き慣れた声に目を開ければそこには案の定、雷蔵と兵助が俺を見下ろしていた。肩を掴んでるのが雷蔵だから…ブランコを揺らしたのはお前か。
「あのさ、俺マジでビビッたんだけど。この心臓のドキドキどうしてくれんの?」
「あらまぁ、私の雷蔵に惚れないでよ」
「僕がいつ三郎のものになったんだよ!」
人が真剣に言ってるってのに三郎が裏声を使って茶々を入れてきた。それをすかさず雷蔵に否定され地味にショックを受けたようだ。はっ、ざまぁ。
「いいぞー、雷蔵もっと言ってやれー」
「なぁ…はっちゃん、弥江は雷蔵に対して怒ってたんだよな?何でいきなり応援してんの?」
「兵助、そういう時は流しとくのが1番だ」
「あっ、そう」
二人は俺が聞こえてないとでも思ってるんだろうか。言いたい放題言いやがって。文句の一つでも言おうとした時、ふとハチの後ろの時計が目に入った。
短い針と長い針は共に6の文字を通り過ぎている。神輿を担ぎあげるまで約30分しかない。神輿の最中は道を開けなければいけないから屋台や出店に行きづらくなる。
「怒ってる場合じゃなかった!皆揃ったし早く祭行こうよ!焼きそばとお好み焼き、それにアイスに林檎飴、タコ焼きかき氷に焼鳥も買える時に買わないと!」
「はっ…!そうだ、俺はクレープ買いに来たんだった…急ぐぞ弥江!」
「うん!」
俺と三郎はお互いに頷きあった後、猛ダッシュで公園から街中へと駆けて行く。
後ろから祭に何しにきたんだよ、っていうハチの声が聞こえてきたけど今は無視無視。
「祭といったら食い物に決まってるよな!」
「当然!」
(もう見えなくなっちゃったね)
(足だけは早いからなー)(今年こそ豆腐が売ってますように)
((いい加減諦めなさい))
(え、なんで?)
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折角の現パロなのに良さを発揮できてないですねorz次はやっとお祭り会場に着きます。展開遅い!
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