優しい人(タカ丸)
「あ…もしかして泣いてた?」
「タカ…丸…さん」
涙でぼやける視界の中、見上げた先に居たのは忍刀を持ったタカ丸さんだった。よく見えなかったけど、汗の匂いがしたから多分今まで鍛練してたのだろうかと推測してみる。今の自分の思考能力じゃそれが精一杯だ。
「どうしたの?誰かと喧嘩でもしちゃった?」
隣に腰を降ろした相手から顔を背け、体育座りで立てた膝に額を乗せ首を左右に振る。口を開けばまともに話せなさそうだったから。
「違うのかぁ…。じゃあ授業で失敗しちゃったとか」
それにも同じように首を振る。タカ丸さんの苦笑が聞こえたと思ったら、ポンと温かい何かが背中に触れた。それは何度も何度も一定のリズムを持って繰り返される。
「前、僕に笑顔が好きだって言ってくれたでしょ?あれ、僕も同じで弥江君の笑顔好きなんだよね。だから…」
今は思いきり泣いて、またいつもみたいに笑ってね。
そう言ったタカ丸さんの
あまりにも優しい声に、
あまりにも優しい手に、
俺は涙が流れるのを止めることが出来なかった。
(泣き終わったらちゃんと笑うから…今だけは甘えさせてください)
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