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【 人間万事塞翁が馬 】
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「・・・つまり、だ」

要領の得ない遥香の話はまあ、要約すればこんなもんだった。

「トリップ小説を作るつもりが、早い話マジでトリップしちまったってことか?」

『今回限りの特別御招待』
『貴方だけ!!オリジナルなトリップ小説を体験してみませんか!?』

そんな謳い文句に騙され、じゃなくて惑わされて日頃妄想が大爆発してしまったらしい。
(体験、ってしっかり言ってんじゃんよ!!)

「んで、なんで俺までここにいるわけ?しかも女の姿になって」

これだけがマジでわけわからん。

そう伝えてみれば、今度の遥香の返事は簡潔なものだった。

「あ、それオプション設定」

「は?」

「だーかーらー!!」

なぜ俺の方が怒られているのかは定かではないのだが。いや、怒るとしたらどう考えても俺の方だろう!

つまり、常日頃から一緒にいる俺が女の子だったらもっとよかったのに!という願望から俺の設定まで付け加えたらしい。
誰か知っている存在を入れたら話を進めやすいし、まあ他に友達いねぇもんな(失礼)

ちなみに容姿は遥香の理想とする姿、顔は元々女顔だからそのまま採用・・・ってコラああああぁぁぁ!!
でも理想の容姿って。お前十分可愛いんじゃねーの?・・・あ、まあ胸はこんなにないもんな(失礼)

日付はどうやら前の世界(ってゆーのも嫌だけどさ)と変わらず。
携帯で確認できたのだが、どうやら登録してあったメモリの番号には繋がらないらしい。
ただし天気予報だとか時報だとか、そういうのには繋がったからこの携帯自体が使えないというものでもないらしい。

「あ。肝心なこと聞くの忘れてたんだけどさ。これって」

どこの世界?

聞きたくない。聞きたくないけど聞かなくては始まらない。

「そっりゃーもちろん!!テニプリですよ!!」

「んなっ!!」

そんな、決まってんじゃん!みたいな顔されても知らねーから!!

・・・それにしてもテニプリかぁ。そっか、うん。
格闘球技漫画だっけ?(違

「え。てかお前もしかしてキャラのいる中学通いたいとか!?」

「もっちろん!あ、歩ちゃんもだよー!!」

「は?なにが?」

えへへー、と笑う遥香の笑顔は見慣れていてもやはり可愛いと思う。
思わず頭ナデナデしてやろうかと思うくらいに、だ。

でも、さすがに今回はそんな状況じゃないことはよく理解している。

「いや、俺今度から高校生なんですけど」

「まーオプション設定でね」

・・・チョチョイのチョイらしいですわよ、奥さん。まーこわい(棒読み)

ここで改めて話を聞いてみたところ、どうやら原作1年前にトリップ、
しかも御丁寧に俺たちは1年生の入学式からこちらでの生活がスタートするらしい。

遥香が1歳、俺はなんと3歳若返っての2度目の中学生ライフを送る羽目になるらしい。

それにしてもまた中学校とは。ついこの間卒業したばかりじゃねーか。

つーか受験勉強頑張った分を返せ!

「なんつーか。抜かりねー感じの設定だな」

わざわざ原作の1年前を選んだりとかさ。
性別一緒、年も一緒でずっと側にいても違和感感じさせないであろう設定とかさ。

そういうと遥香は得意げにこうのたまった。

「ふふっ、日々の妄想の成果ですよ!!ついでにゆーとおねーちゃんの特訓の成果かな!」

「はー、って!そうだよ!!なら羽苗を道連れにすりゃーよかったんじゃん!!」

聞きたくなかった単語には余裕のスルースキルを発揮!!

羽苗とは遥香の姉のことだ。
俺と遥香に悪しき道を指し示した悪魔、いや、余計なことは言うまい。

「道連れとはしつれーな。ま、おねーちゃんより、やっぱ歩ちゃんでしょう!!」

しつれーも何も。てかこれほどまでに自分を選ばれて喜べない出来事があろうとは。

「はー。でさ。すっげーーー聞きたくないんだけどさ」

大きくため息をつくと俺は腹をくくる。

今の今、最後の最後まで触れなかった、否、触れたくなかった疑問を口にする。

「どこの学校を選んだわけ?」

遥香はよくぞ聞いてくれましたとばかりに満面の笑みを浮かべた。

・・・いやー、なんかもう邪悪なニンマリ顔にしか見えねーんだけど。
とがった頭の角や黒い尻尾までが見えるような気さえする。

「ふっふーん!聞いて驚け!!

ひょーてーがくえんだーーーー!!!!!」

じゃっじゃーん!!と御丁寧に変なポーズに変な効果音までつけて発表してくださいましたよ。

いや、もうお前が氷帝大好きなのは知ってるし。
なんとなくわかってたし。てゆーかテニプリと聞いた時点で想定済みですよ。

聞きたくなかっただけでねえ!!!!

てかさー。言いたくないけどさー。
顔青ざめさせてごめんなさいとかつぶやいていた、登場後5分間のしおらしい遥香は一体何処へ!!

何開き直ってんだバカヤローーーーーーーーー!!!!!

俺の叫び声はマンション中に響き渡ったとか。渡らなかったとか。


【 第零章 END 】

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