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【 人間万事塞翁が馬 】
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びっくりした。

そう言えば「びっくりしたのはこっちだよ!」とまたしても理不尽な怒りを買ってしまった。

「いつの間にそんな話に?」

「いや、なんか朝教室にいたら担任とやらに呼び出されて。付いて行ったら職員室でね」

入試でトップだったらしいよ、と言えばそんなの受けたっけ?と不思議そうな顔をして首を傾げていた。

「そんな感じでさ・・・ま、もう済んだことはしょうがないよ。式も、もうちょっとしたら終わるし。教室に帰りたいんだけどさ」

冷静な俺は最早びっくり耐性がついているといっても過言ではないかもしれない。

さて。それでこいつをどうしようか?

起こすのも厄介である。変に気に入られたり目をつけられたりしたくない。
だけどきっと彼もこの後HRとかがあるんだろうし、きっと例の部活だってあることだろう。

「どうするの・・・?」

頼りない声で遥香が尋ねる。もしかしたら自分のせいで、などとくだらないことを考えているのだろうか?
馬鹿だな〜、ホント。平気で人のこと巻き込むくせに、変なとこで責任感じちゃったりするんだから。

「よし。・・・放っとこうか!」

俺が出した結論は何とも無情なものだった。

下手に関係を築くのは良くないだろう。
なんといっても彼は目立つし、例のホスト部(違う)の一員だ。

バックには例の俺様やら、まあ変なのがわんさかついてくるのだから。

「い、いいのかな・・・?」

意外にも反対はしなかった遥香。それでも心配した顔を見せるので大丈夫だよ、と笑ってやった。

「ん〜、じゃあ後で見つけやすいように、そこの渡り廊下ん所にでもヒント残しておくか」

悪いな、と心の中で謝罪を入れて芥川の頭の下にそっと手を入れて持ち上げる。

ふわふわの髪の毛が手にくすぐったかった。


ああ、そうか。
彼もまた"リアル"なのだ、と心の片隅で気がつく。


枕か何かがあればいいのだろうが、生憎そんな都合のいいものは無い。
あれば彼はすでにそれを使用していることだろう。・・・って、あ、それが俺の脚なわけね!

ブレザーなどで枕を作ってやれば親切なのだろうが、奈何せんそうまでしてやる義理はない。
むしろすでに貸しが一つ、と言ったところか。つながりなんてわざわざ残していくはずがない!

ってなわけで、地べたに枕なしだ。ごめんよ。
まあきっと彼のことだ。こんなことも慣れたことであろう。

そっと頭を地面に置くと、ん、と一瞬唸って再び眠りの底へ落ちていった(ようだ)

さて、メモとはいったが何か書くものは・・・

ブレザーの胸ポケットにボールペンをさしているので問題はない、が

「紙・・・」

なんかあったっけかなぁ、真新しい制服にそんな都合よく入っているわけ、って

「・・・あったよ」

そう、それは朝もらったまま、結局役目を果たさず仕舞いだった、例の挨拶文が書いてある原稿だった。

「ま、いっか」

どうやら名前は書かれていない。どうせ毎年使いまわしているんだろう。

ふと横を見れば、遥香が興味津津、といった様子で芥川の髪をいじっていた。
起きる心配はないので構わない、と俺はゴソゴソと原稿の裏に文字を書いた。

「よし!・・・おい、遥香!もう教室帰るぞ!!」

そう言って立ち上がると、遥香は一瞬名残惜しそうに芥川を見やって、それでも俺に倣って立ち上がった。
うん、物わかりのいい子は好きだよ。

チラリと芥川を見やる。うん、相変わらず寝こけてる。

俺が歩き出せば遥香も付いてくる。
俺は学園の地図はインプット済みだが、遥香は違うだろう。
方向音痴だし、何よりここがどこかもわからないはずだ。

渡り廊下、式が終わればみんなここを通るはずだ。

俺は手のひらサイズの石を拾って、廊下の横っちょ、そう、例の彼が眠っている方に向けてメモを置くと、その上に重石としてその石をのせた。

時計を見る。うん、そろそろ式が終わる。ちょうどいいタイミングだ。

俺は遥香の腕を引いて、まだ誰もいないであろう教室に向かって歩き出した。



俺はこの時気付いていなかったんだ。

いくら目を覚まさなかったとはいえ、彼が寝入る前にはすでに顔を見られているということ。(仮に寝ぼけていたとしても、だ)

そしていくら名前が書いていなかったとはいえ、

今年の新入生代表は俺一人しか存在しないということを。

立ち去った後の渡り廊下で、俺が残した例のメモが風に吹かれてカサリと音をたてた。



『眠り姫はこちらに』



【 第壱章 END 】

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