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これも愛
殴られることには慣れていた。
寧ろ嫌いじゃないかもしれない。
だって、俺を無慈悲に殴り倒した後此奴は絶対に後悔する。そして慈愛に満ちた瞳に水を溜めて俺を抱きしめる。


「ごめん。痛かったな、本当にごめん」


ポロリと涙を零してから此奴は決まってキスをする。その度にファーストキスの憧憬が俺を襲い、ほろ苦い記憶が蘇る。

この瞬間がたまらない。

目の前の男を通して一生捕らわれ続けるあの男を思い出す。
俺の全部を持ってった癖に“気の迷い”で済ませた酷い男。

泣きじゃくる男の背に腕を回しトントンと叩いた。
ズズーっと鼻を啜る音が間近で響く。


「…俺のこと嫌いにならない?」

「あぁ」

「俺、また、殴って、しまうか、も」

「いいよ」


何度も何度も触れるだけのキスを繰り返す。
此奴の涙が少ししょっぱい。


なんとなく、の感覚ではあるが今までの経験から殴られ続けた右頬が熱を持ち腫れてきていることが分かった。


「…好きなんだ」


震える声で告げられて、此奴の猫っ毛を撫でてやった。


あ、今幸せかも。





fin



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あきゅろす。
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