季節外れの桜、儚く散る君 2
死にたくないと渇望した。
医師に言われた時はすんなりと事態を受け止めたが、俺の見舞いに来るアスラン達の事を思うとどうしようもなくなる。
ラスティが病室に戻って来た時、少しおかしかったのはこのせいだったのだ。
無駄な心配をかけてしまう。
気をつかわれるのは嫌いだ。
自分の非力さを思い知らされる。
それを受け止められず、否定し続ける俺。
そんな人生も、もうすぐ終わりを迎えるのだ。
泣かない訳がない。
特にこれと言ったものはなかったけれど、あいつらだけには迷惑かけたくなかった。
俺が死んだら、あいつら絶対一晩中泣くんだぜ。
ラスティなんか、いつもはお調子者のくせに人一倍泣くんだ。
そんなあいつの涙も拭えないし、泣かせてる元凶も俺になる。
枕を濡らして、眠った。
***
「もう秋だな〜、お前の桜まで後は冬越すだけだぜ?」
「越せたらいいな…。んで、みんなで花見すんの……」
弱ってきた****を見ると、医師のいってたことは本当みたいだ。
死期は近い。
桜まで、間に合わないかもしれない。
本人も気付いているだろう。
でも、せめて春までは。
「なぁ、俺が死んだら……泣く?」
唐突にそんなことを言われて、俺の心臓は跳ね上がる。
なんて恐ろしい事を言うんだ、こいつは。
そっと色素の薄い髪を撫でながら答えた。
「死なないから、泣かない。」
その後、安心させるようにニッと笑ってやった。
最近こいつは、死という言葉をよく口にするようになったと思う。
俺はそんな現実は受け止められないし、受け止めたくない。
寧ろ、嘘であってほしいぐらいだ。
「……んなこと言われたら、死ねないじゃないか……」
小さい声でそう呟いたのが聞こえた、わざとらしく何て言った?と返すと何もと短く返ってきた。
こんな話しをしていたのは、秋の半ばだったかな。
(080613)
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