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一年前……
イグニス大陸
「マッケンロゥの森」
‐テント 司令部‐
「ジルバ隊失格。残り四隊になりました」
その男は手に持っているボードに印をつけ、少し溜め息混じりに言った。それを聞き、もう一人の男は座っている椅子に深く腰掛け、こちらも溜め息をついた。
「はぁ…、今年は特別、魔物が強い訳でもなかろう……」
「昨年に比べ、流石にこれは落ちすぎですね。身体的にも肉体的にも遥かにレベルが下回っています」
テントの中はどんよりとした空気に見回れた。
その男が持っているボードには、数多くの隊の名前と、紅い×印でびっしりだった。それに比例するかのように男の溜め息も増えていく一方だった。
「…しかし隊長。まだデューク様達の隊は残っています」
ボードの名前を読み返しながら、その男は隊長に言った。
「……ふぅむ…」
「まだ気が進まないのですか?? デューク様ももう十六になるのですから……。早いものですね」
隊長と呼ばれた男は、納得いかないといった趣で自慢の白鬚をいじった。そして、また溜め息を吐く。
「世の中どこに行っても争いは絶えない。欲や野望に溺れ自我の念うがままに略奪する……。そんな世界に、デューク様を出したくは無いのだ。しかし、心の中に彼の“力”を使えたらという自分がいる…。もしかしたら、“人”こそが“魔物”なのかもしれないな………」
そう言って隊長は椅子を離れ、静かにテントを出ようとした。
「…少し……、風に当たってくる」
「………」
男は何も言わなかった。
止めもしなかった。
静かになったテントの机の上に、男は静かにボードを置いた。何かを噛み締めるように、その男は静かに呟いた。
「……では、我々『白星騎士団』は何の為に存在するんですか?? 誰の為、何の為に…」
その時、外にいた隊長は森に轟く雄叫びを聞いた。そしてその時、後悔すると同時に弾かれる様に走り出した。
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