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好きな子のためなら。
仔スクディノ/学生時代












昔から俺はいろんな奴に苛められていた。
その度にスクアーロが俺を助けに来てくれる。なのに俺はあいつに何一つ恩返しができないまま、ただ無言で守られていたんだ。
そんな自分が悔しくて憎たらしいと思えた。けれどもしかたがないのだ。自分は無力。
なにもできない存在。あいつに助けられる価値観しかないのだと。




ある日のことだった。

俺は目の前に繰り広がれる無残な光景を見た瞬間、背中がゾクッとした。



あいつの机の周りだけに散らばる無数の白紙、お菓子のカス、ゴミ屑、その他無数のもの。
そして机の目の前に立っている、あいつの姿。
長い前髪の間から覗く目は、静かに殺意が込み上がっていた。


「スクアーロ!!」


俺は咄嗟にスクアーロの名前を呼んだ。

するとスクアーロがゆっくりと俺の方を向き、ギロリと睨んだ。
その瞬間体が急に硬直して動けなくなってしまった。
あいつの、凄まじい威圧感のせいで。
スクアーロは再び視線を戻す。


「おいてめーらァ。俺に喧嘩売ってのかァう゛ぉおおおい!!!」


その言葉に、周りにいた生徒のほとんどが小さく悲鳴を漏らす。
だがそんな中あいつの怒りに触れた原因であろう1人の男子生徒が急に笑い出したのだ。


「喧嘩を売っているのはおめーだろスクアーロ。いっつも俺らがディーノを虐めているのを邪魔しやがってさ。
正直鬱陶しいんだよ。失せろカス鮫」


今まで後ろに隠していたスクアーロの教科書を周りのみんなに見せびらかすように取り出し、
本人の目の前で教科書を破りだす。

しばらくして教科書はあっという間に形の原型をなくし、ただのゴミくずと化した。


「お、おいやめろよ…!スクアーロはただ、…!」


前に出ようとしたディーノの目の前に、彼の腕がスッと横に伸ばされる。


「黙れへなちょこ。これは俺とあいつの問題だ」
「で、でも…!」
「…黙ってろっつってんだろが」


やはり彼だけには逆らえないなにかがある。
口先は動いても、どうしても体がいうことを聞かなくなってしまう。
小さく頭を頷き、拳をギュッと握り締めた。


「おいカス。どうしたらこいつから離れてくれるんだ」


「ああそうだな。とりあえずお前を50発殴らせてくれたら許してあげてもいいぜ」


そう言い放つと、男子生徒の口元がニヤりと引き上がらせた。










夕方学校のすぐ近くにある景色が綺麗に見える丘で、スクアーロは体中に受けた暴力の傷を堪えながら夕日を見上げていた。
今なら手を伸ばせば夕焼けが掴めそうなそんな気がする。

結局55発ぐらい殴られ蹴られ散々貶された。
それでも痛みは堪え1つも呻き声をあげなかったことに奴らは悔しがっていたが、
一応それでディーノの件から離れていくことを承知してくれた。


「スクアーロ!!やっと見つけたっ…、」


息を切らせながら向こうの茂みから、ディーノが顔を現した。


「今さらなんだよ。助けにでも来たのか?」
「…ごめんなスクアーロ。俺のせいでこんな目に遭わせちまって…」


動けない彼の元に駆け寄り、痣だらけの手を優しく握り締めた。
その時スクアーロは手の甲に染みるなにかを感じた。そっと目線を下に向けると、
自分の手の甲がディーノの涙で濡れていたのだ。


「泣くんじゃねぇよへなちょこ。みっともねぇな!!」
「だってスクアーロが…こんなにボロボロになって…俺…、」
「だから泣くな!」


本当はお前は、なに知らないんだ。
俺がお前に惹かれているのを。


だから気になる奴が他の奴らに虐められているのを見るのが嫌だから、助けただけ。

お前のためなら俺はなんでもする。だから逆に俺が虐められようなら、それでいい。
ただ毎日泣かれるのだけは勘弁なんだ。
それぐらい分かれよ。お前の悲しむ顔は、二度と見たくない。

だから笑ってくれよ。
それだけで俺は元気になれるんだ。


「じゃ、じゃあ今度は俺が…スクアーロを守ってやるからな…っ!」
「ああ、そうだな」



まぁ前よりは厄介なことが起きそうな予感がするな。

これからは自分のためだけに守ろうとそう決心し立ち上がったディーノの細い背中を見て、スクアーロは静かに笑った。









END***


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