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深夜になり、そろそろ例のストーカーが現れる時間帯だ。
窓際のカーテンに隠れる山本とハル。沢田はベッドに寝転びながら漫画を読んでいる。

すると山本が小声で沢田の名前を呼んだ。


「来た?」
「あぁ。今家の前でなんか着替えているぜ」


相手に見つからないように、そっと窓から顔を出す。
とは言ってもちょうど電信柱と重なって奴の姿が見えなかった。また時間が深夜だったため、暗くてあまり見えない。


「やっぱり見えないよ」


とりあえずカーテンを閉め沢田は山本にそう言った。

「どうするんだ。あいつを追っ払うか?」
「ツナさん、今がチャンスです!相手はツナさんたちのことに気付いてないようですし」

今ならストーカーを捕まえるチャンスがある。
リボーンも俺はハルに賛成だ、と言っている。


「じゃあさ、そっと近付いてから捕まえない?」


かくしてストーカー確保の作戦が実行された。





シーンと静まりかえった家の中を歩く2つの足音。
いづれも階段を下りて、玄関のところまで忍び足で急いでいく。
沢田は玄関のドアの下にかがみこみ、今頃裏庭で待機しているだろう山本に携帯で連絡をする。

「山本聞こえる?今玄関まで来たんだけど」
『こっちも着いたところだ。準備はいいか?』


なるべく小声で返事する。ちなみにツナはレオンが変形した縄を持ち、ハルはなぜか虫を捕まえるための網を持っていた。


「ハル、遊びじゃないんだからさもう…」
「いいえツナさん。ハルはこの網でストーカーの頭を逃がさないようにするんです!!」
「まぁ役に立つかもしれないね」


余計な会話はあとにして、いよいよ外に行く時が来た。
沢田が携帯に口元を寄せてカウントダウンをする。
かすかに山本の息を飲む音がした。

あと5秒、4秒、3秒…。


「行くよ、せーのっ」


玄関のドアを開け、一斉に駆け出す。

俺たちより先に山本が背後からストーカーを捕まえた。

「!!?わわわわわわわっは、離せっ!!!!」


ストーカーは今の状況を把握し山本の腕を振り払うのに必死だった。
それは作戦のうちで、その間に俺たちが縄で体を縛り上げる。
バサッ。

ハルが興奮気味に網をストーカーの頭に被せた。


「はひっデンジャラスなストーカーを捕獲です!!」
「おいてめーふざけんなよ!!!!」
「は、はひ…まだなにか言ってますっ…」


とりあえず捕まえれたことだし、俺たちはストーカーの素顔を見ることにした。
頭に被せていた網を外してみると、見慣れた顔が現れてきた。


「え、十代目!!?」
「やっぱり獄寺君だったんだね」

大体予想はついていたが、やっぱりストーカーの犯人が獄寺だったとは、と沢田は悲しいような切ないような気持ちでいっぱいだった。

そんな沢田の様子を見ていたハルは、静かに獄寺の目の前に立った。


「…獄寺さん」
「なんだよ、…っ!」


そう言い、ハルに顔を上げた瞬間獄寺の頬に彼女の平手打ちが降ってきた。

最初一体なにが起こったのか分からなかった彼だったが、頬に手を当てるとピリッと痛みが走る。


「ッてめぇ!いきなりなにしや…!!!!」
「あなたのせいでどれだけの間ツナさんが嫌な思いをしてきたと思ってるんですか!!」
「ハル…」

普段怒らないハルが真剣な顔で怒鳴った。
あまりの迫力に獄寺君はなにも言い返せない様子だった。


そんな気まずい空気を破ったのは俺だった。
さすがにハルに立ち向かうのは少し勇気がいるけど、今の獄寺君が可哀想に思えたんだ。


「ね、ねぇハル!獄寺君も悪気があってこんなことをしたわけじゃないんだしさ、許してあげたらどう…かな?」


ハルは無言のまま謝る気配を見せなかったが、獄寺君は申し訳がなさそうな顔で俺に頭を下げた。


「すみません十代目!!!!」
だが彼が次に口にした言葉に思わず衝撃を受ける。

「実は俺、今までの記憶が全然ないんです!気が付けば十代目の家の目の前にいて…」
「ええっ!?」
「ってことは今までの獄寺の行動はなんだったんだ?」

山本が疑問をつく。


「実は獄寺さんって二重人格じゃないんですかぁ?」

嫌味ったらしく言うハル。
でも彼女が言ってることもあり得るかもしれない。

「認めたくはないっスが確かにここ最近夜になると、それからの記憶を忘れてしまうことが多くなったんスよ」

ってことは。


「もう1人の獄寺が君の中に存在してるんじゃ…」
「ハハッ。獄寺が2人かー。面白いことになったのな」
「う、うるせーぞ野球馬鹿!」


なんだかんだで、獄寺君は自分の意思でストーカーをしていないことが分かって安心した。

でも。

「もしかするとこれからも、もう1人の自分が十代目の家に来るかもしれません…」
「えぇーっ!?」


一生ストーカーされ続けられるのは勘弁だよ!









END***


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