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貴方に花束を。
綱獄/夫婦パロ/微黒ツナ










「十代目…その、す、すみません」
「ねぇ隼人。俺のシャツに染みをつけるなんていい度胸だね」
「だから、その、」


十代目はこんなに怖い人じゃなかった。もっと優しくて、決して怒らない人だった。
それなのに今俺は物凄い力で壁に押し付けられている。十代目の腕によって。


「やめて下さい十代目…俺は…わざとじゃなくて、あなたが…!」


あなたがわざと俺の足を引っ掛けたから…!!

本当はそう言いたかった。
けれど十代目は俺の言葉すら聞いてもくれない。
気が付けばお互いの唇と唇が触れそうなぐらいまで十代目の顔が目の前にあった。

魅惑の笑み。十代目のほんのり赤く染まった頬。
先ほどから鼻腔に入る苦い酒の匂い。

ああ、この人は完全に酔っている。
そう悟った。


「――そうだね。とりあえず俺の相手になってよ。それで1回分許してあげる」


彼の胸元を掴み自分の方へと引き寄せる。
一瞬抱きしめられるのかと思ったが、沢田はこちらに落ちてくる獄寺の体を華麗に避け、彼をベッドの方へと放り投げた。

沢田にしては結構力があった。シーツに埋もれる獄寺の髪を掴み上げる。
彼の口から呻き声が漏れた。


「うッ…」
「そそるね、その声」


ククッと満足そうに笑みを浮かべ、獄寺の唇を無理やり奪った。



「…やめ、て、十代、目…んは…ぁっ…」




『…好きだよ隼人』





遠くの方で十代目の声が聞こえた。でも十代目は目の前にいる。
意地悪な笑みを浮かべた十代目が俺の息を奪おうとしている。






「おい、俺のを舐めろ」
「え…」




突然キスが終わった後十代目はギロリと俺を睨み、そう言った。


「でも、」
「いいから舐めろ!」


後頭部を押さえつけられ、無理やり十代目の性器を口の中に入れられた。


「うぐッ…んん…じゅ、」
「俺のを咥えたまま喋るなんて、いやらしいヤツだな」


喉の奥まで入れられ息ができない。
何とか沢田の機嫌をよくするために、一生懸命性器を舐め続ける獄寺。
そんな彼の頬にいつの間にか涙が零れだしていた。涙に気付いた沢田は、再びニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。











事後の朝、ベッドにぐったりと倒れている獄寺とシャツにネクタイをつける沢田の姿があった。
あれから何度も獄寺はイかされた。それも気絶するませの間。
しかし朝になると完全に酔いが醒めた沢田は、自分の隣でぐったりとしている彼を見て、今まで自分がしてきた行為を後悔した。


本当はこんなはずじゃなかった。

額に手を当て項垂れた。
どうせ謝ろうとしても、昼間まで起きることはないだろう。


溜息を吐いて部屋を出ようとした、その時だった。

ベッドでもぞもぞと動く音がした。目を向けるとダルそうに体を起こす獄寺の姿があった。




やがて彼と視線が合う。
気まずい空気が流れた。


勇気を振り絞って沢田が話を持ち掛けてみた。


「お、おはよう獄寺君」
「……」


返事が返ってこない。


「あの…獄寺君?」
「…十代目」


すると突然獄寺の目から涙が溢れ、そしてボロボロと零れ落ちた。

慌てて彼の元に行きハンカチを渡す。それでも涙が止まらず、ハンカチを涙色に染めていく。


「あのさ、獄寺君。今日誰の誕生日か分かる?」


悲しむ獄寺の顔を見て、何かを思い出したかのように突然話を変えてきた沢田。
ただただ涙を流す彼は無言で首を横に振る。



「そう…」


彼はまだ知らない。
今日は自分の誕生日だということを。

しかたがないな。沢田は優しく微笑むと、部屋の隅に置いていた一輪の赤い薔薇の花を取った。
そして薔薇の花を小さくむしり、彼の耳に花をかけた。


「君には薔薇が似合うよ獄寺君。そして誕生日おめでとう」



沢田がそう言うと、
いつの間にか彼の頬は林檎のように赤く染まり、表情はふわりと微笑んでいた。









薔薇の花言葉は『私はあなたを愛する』








END***


あきゅろす。
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