1 3日目が過ぎた朝突然ディーノがこんなことを言い出してきた。 「恭弥、遊園地に行かないか?」 「急に何を言い出すかと思えば」 雲雀は口につけていたカップをテーブルに置き、膝を組みながらテレビのリモコンを取った。 別に遊園地はいいけれどあなたは毎日仕事に追われて行く暇なんてないでしょう?雲雀は痛い所を鋭く突く。 でもディーノはそんな彼に対し悠然とした態度で鼻を鳴らし満面の笑みを浮かべた。 どうやら今日は特になにも予定がないようだ。仕事はほとんど終わらせたつもりなのだろう。 ディーノは表情に出るタイプであり、仕事がある日は疲れきった顔で仕事に打ち込んでいるのだ。 まあたまには彼に休日の楽しさを教えなければならないだろうと雲雀は溜息を吐き、仕方なくテレビを消した。 「いいよ。行ってあげる」 「本当か!よしじゃあさっそく行く準備するぞ」 場所は変わって並盛遊園地。 とは言ってもディーノたちがいるホテルからここまで約10分で着いた。 かなり近い場所に遊園地があったと思われる。 さっそく何に乗るか?とディーノに聞かれ雲雀はあれに乗りたいとある乗り物を指を指す。 ジェットコースターだ。 すると一瞬にしてディーノの顔から血の気が引いた。 彼の態度に素早く気付いた雲雀が聞く。 「まさか怖いの?」 「な、なわけねーだろっ乗るぞ!」 言っている言葉は勢いがあっても、ジェットコースターに行くまでの道のりをゆっくりと歩いていく彼のギャップの差に思わず雲雀は笑みをこぼす。 そして歩いて5分。やっとジェットコースターの乗り場に着くと、素早く雲雀が最前列の場所を確保した。 「なにしてるの。早く来なよ」 「いやだって一番前って…」 「怖いの?」 「誰が怖いと言った!!!!」 雲雀の挑発に上手く誘き出されたディーノはずがずがと彼の隣に座った。 だがすぐに表情が元に戻る。 「…なんか腰抜けそう…」 「やっぱり苦手じゃないか」 やがて発車のベルが乗り物内に鳴り響き、同時に動き出す。 ジェットコースターはゆっくりとレールを上がっていき一気に一番上まで上り詰める。 雲雀が言うにはここは一番最高潮の瞬間らしい。でもその後に来る恐怖とのギャップの差もたまらないとか。 乗り物が下に傾いたと同時に、いよいよディーノの心臓の鼓動も高鳴っていくのであった。 やっとすべてが終わると、すでにディーノの体は形がなくなったかのようにふにゃんと曲がりくねっていた。 「置いていくよ?」 「ちょ、待って、きょ…」 それと未だに吐き気に襲われる気持ち悪さが、彼の言葉を邪魔してくる。 こんな姿を雲雀に見せるのが悔しいが、今は仕方ない。 「情けない顔しないでよ。あなたの部下を呼んであげようか?」 「ああ、頼む…」 しばらくしてロマーリオと他の部下2人がディーノの元に辿り着き、さっそく肩に担ぎ上げた。 同時に腹の中にあったものが押し上げられるような感覚がディーノを襲う。 「うぅ…!」 「すまんすまん。やり方が荒かったな」 と、今度は乙女が憧れていると囁かれる所謂「お姫様抱っこ」をされた。けれど別の感情が彼を襲う。 しかし、今さら恥ずかしいから他の運び方にしてくれと言う余裕がない。 仕方なくディーノは恥ずかしさを顔で隠し、お姫様抱っこで下まで運んでもらうことにした。 [→] |