「どうしたの、さっきから変な顔して。」

「……は?変な顔なんてしてねぇよ。」

「…ほら、やっぱりしてるよ!どんどん変になってくじゃん!」

「失礼な事言うな!」



俺の頭を一回叩いてから、やっぱり変な顔をしている秀明はズビッと鼻をすすった。




そう言えば…



「…秀明の泣いてる所、初めて見た。」

「っ…う、うっせぇ!俺だって涼介の泣き顔なんて初めてだし!」



……あぁ、そっか。



泣いてる所を見られて恥ずかしかったのか‥。



変な顔をしていた理由が分かって、少し可笑しくなる。

クスリと笑うともっと変な顔をする秀明に、本当に可笑しいと思った。



「ありがとう!何だか元気出てきたっ。」

「…そっか、まぁ…いいけど‥…さ…にしても……、」



ブツブツと小言を呟きながらも、どこか照れたような嬉しいような表情を浮かべる秀明に、俺もまた笑う。







─ゲームみたいにリセットなんてしたくない。

簡単に全てを消していたら、友達の優しさも泣き顔も知らなかったから‥。





忘れかけた俺の幸せ。

それは平凡な日々。



家族が居て友達が居て、親友と恋人は居なくなっちゃったけど…

まだやり直せる。

だってだって、こんなに幸せが残っているのだから。

無くした分の幸せは、また増やしていけばいい。



そう言えば…いつだったか、こんな話を聞いた事がある。



『辛い』に線を一つ足すと『幸せ』になる。



俺にとっての一線はきっと沢山ある、今は気付いていないだけできっと…。

こんな風に少し前向きな考えが出来るのは秀明のお陰だなって…そう思って。

笑った。


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