これ以上の会話はない
─壊せなかった関係。
俺が壊すことが出来ないなら、自然と壊していこうと思った。
だから俺は何度も繰り返し浮気をする。
自分の部屋では他の奴を抱くし、教室で誰かがベタついてきても見せつける為にそのままにした。
そうやって涼介に分かるようにワザと浮気を続ける。
浮気を繰り返せば涼介から別れを切り出し、自然に離れていくと思ったから。
「…ただいま謙人。」
「…おかえり。」
浮気相手である由希とソファに並び適当に過ごしていたら、涼介が帰ってきた。
俺は自然に涼介を見る。
「…あっ、……じゃ、邪魔だよね。…ごめん。」
涼介はヘラっと力なく笑い自室へ入っていった。
俺は言い訳も止める事もしなかった。
「裡くんって空気読める子だよね…。」
「……。」
由希が少し呆れたような苦い顔をして言う。
それに対し、自分の表情が引きつっていくのが分かった。
「謙人君もそう思うよねぇ?」
「………せぇ。」
「‥え?」
「…何でも。」
思わず出た悪態を何とか誤魔化す。
今日はもう気分が乗らなくて、由希にさえも苛立ってきた。
「なぁ、明日小テストあったよな?」
「………うん。」
「今から勉強するから今日は帰れ。」
「えぇー。‥あ!じゃあ一緒に勉強しよ?」
「無理、帰れ。」
どうしても一緒に居たいと渋る由希を、適当な理由をつけ帰らせる。
そしてまた、ソファに深く腰掛けた。
[NEXT]
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