なのに。


こんなに裏切られても俺は何も言わなかった。



─どうして浮気するの?



言いたいのにどうしても言えない。

謙人の気持ちを聞く事なんて、今すぐできるけど。

でももし「お前とは遊びだ」なんて言われたら…俺達の関係は呆気なく終わってしまう。

そうなると、『恋人』だけでなく『親友』という関係にも戻れなくなるに違いない。

謙人と繋がりがなくなるという事は、俺にとって耐え難い事だった。

だからいくら浮気をされても何も言わず、平気なフリして黙っている俺。

謙人に捨てられる事が怖くて、怖くて…。

ただ、謙人だけは失いたくないんだ。

謙人が居なくなるなら、浮気ぐらい我慢出来る。

愛がなくても、一番じゃなくても。

俺の側には謙人が必要なんだ。





「…っ、うぅっ…、」



布団の中で、声を噛み殺して泣いた。

どうしても謙人が好きだから。



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