これ以上の危機はない
「涼介、俺のこと好きだろ?」
「………なに、言ってんの‥謙人、」
一瞬、時が止まった気がした。
息をするのを忘れるくらい驚いて、しまいには変な汗まで出てくる。
何でだろう。
いつも通りだった筈なのに。
何故こうなったのか。
突然過ぎて理解出来ない。
いつもと同じ学生寮までの帰路を、幼なじみである奧野謙人と歩いていた。
肩を並べ、今日の小テストがどうとか、さっきの先生がどうとか、たわいない話をしていた。
なんて事ない、いつも通りの光景。
謙人も俺も。
道も空気も制服も。
いつもと一緒。
「いきなり‥どうしたんだよ。……確かに謙人の事、好きだけど‥」
「…違うだろ。」
「…何が?だからさ、謙人の言った通りだって‥」
「それが違う。嘘だろ?ちゃんと俺の目ぇ見て言えよ。」
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