これ以上の混乱はない
「じゃ、付き合うか。」
冗談のようで本気の言葉。
それを合図に、崩壊が始まった。
この学園で男を恋愛対象に見る事は普通だ。
男同士のカップルなんてザラにいる。
だからと言って、涼介を恋愛対象として見る事はなかった。
俺と涼介は幼なじみだ。
小さい頃から家族ぐるみの付き合いで、俺は涼介を最高の親友だと思っていた。
どんな俺も、我が儘も、笑って受け入れてくれてる。
どこまでも優しい涼介。
涼介と居ると落ち着くし、何より楽しかった。
──ずっとこのままで。
幼い頃からの些細な願い事。
だが、その願い事が叶わない事をある時知ってしまった。
それを知った俺は、『崩壊』を始めた。
俺が『親友』という関係を壊したんだ…─
涼介の目はいつでも俺を好きだと言っていた。
好きだよと、何時からか俺を愛おしそうに見つめていた。
──涼介が俺に『恋愛感情』を抱いている。
初めて自覚した時。
涼介に初めて裏切られた感覚に陥った。
俺は理解ある親友として好きなんだ。
なのにお前は違うのか?
好きの違いに戸惑って涼介が分からなくなった。
もう投げ出そうと何度も関係を切ろうとした。
でも出来ない。
涼介の隣は落ち着く。
自ら安らぎを断ち切るなど、俺には出来なかった。
ズルい俺は涼介の好意に気付いていながらも傍に居る事を選んだ。
例え好きに違いがあれど、俺は俺、涼介は涼介。
『最高の親友。』
それ以上はないんだ。
俺は自ら隣に居ることを選んだ。
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