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「ちょっと遅くなったな‥」
委員会が思っていたより長引いてしまった…と言っても30分程度だけど。
それでも今日は、少しでも早く部屋に帰りたかった。
部屋には謙人が居るから。
謙人が待っていてくれてるから。
待ってくれている謙人を思うだけで帰りの足取りは軽く、思わずスキップでもしてしまいそうなくらい浮かれていた。
部屋の前に着いた俺は、立ち止まり、深く深呼吸する。
『謙人が待ってくれてる。』
それはいつも通りな筈なのに、今日だけは格段違うように思えた。
謙人が優しく接してくれたからかもしれない。
ただそれだけ。
謙人にとっては何気ない事なんだろうけど、俺にとっては嬉しいものだった。
『ただいま謙人、ちょっと遅くなっちゃった。』
扉を開けたらそう言おうと決め、ドアノブを握る。
また深呼吸し、扉を開いた。
「‥あ、れ……?」
だが、そこに思っていた姿はない。
部屋の電気も点いていなくて、真っ暗だった。
その事に眉を歪めながら、部屋の電気を付ける。
「けんと………?」
小さい声で呟き、本来なら居るはずの彼を探す。
キョロキョロといくら辺りを見回しても求める姿は見当たらなかった。
もしかして、と思い、謙人の部屋へ視線を向ける。
ここに居ないのなら自室に居るのでは…と俺は思った。
──ドアノブを握ったこの時。
俺が未だ知らない『崩壊』が始まろうとしていた。
自ら開く扉の向こう側にその『崩壊』があった…──
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