これ以上の決意はない
俺は取り戻す事を決意した。
壊してしまった関係を、どうしても元に戻したかった。
だから俺は、今までズルズルと関係を持っていた奴全てを切った。
俺はもう浮気なんてしない。
涼介に本気だ、と言う精一杯のアピール。
しかし、その姿勢を見て欲しい張本人に、今現在避けられている俺。
多分前島の部屋にでも行っているのか、全然部屋に帰ってこないし、教室でも声を掛けるタイミングがまるでない。
それでも声を掛けるタイミングを計っては、失敗を繰り返す日々が続いていた。
もう言い訳も会話も出来ない状況に、どんどん焦りを感じる。
このままでは本当に戻れない…。
そんな気がして…──
「涼介!!」
「………。」
終礼が終わった直後、急いで声をかけるが、見事に無視されてしまった。
それでもメゲず声を掛ける。
今日こそは話したい!
「涼介待って!りょ、」
「謙人くん!!!」
「わっ…!?」
後ろにグッと引っ張られ一瞬ぐらついたが、なんとか耐える。
振り向くと、俺の服を掴んでジッと此方を見つめる由希が立っていた。
……てか、それより涼介!!!
急いで涼介の行った方向に向き直す…が、そうこうしている内に涼介の姿は消えていた。
「…あっ…何かゴメンね?そんなに睨まないでよ…。」
またしてもチャンスを逃してしまった苛立ちを見せる俺に、由希が若干苦笑いを浮かべている。
俺は由希のそんな様子に、仕方がないと舌打ちし、用はなんだと急き立てた。
「あのさ、今時間ある?少しでいいんだけど…」
「イヤ、…急いでるから無理。」
「……ふぅ〜ん。…ついこないだまではイイ関係だったのに‥急に冷たいねぇ?」
正直に思った事を答えると、若干冷ややかに見える視線を向けられ、自分の顔が引きつる。
由希にそんな目を向けられても仕方がない…と思った。
想っていなかったにしろ、一度は好きだと告げた人。
それなのに『好きな奴が出来た』なんて一方的に切って、俺はどこまでも最低な人間だ…。
我が儘で自己中な事はもう嫌なほど自覚している。
それでも今は涼介の事しか頭になくて…
罪悪感を感じながらも、そういった行動を取るしか出来なかった。
「……もういいよ。」
「…わりぃ。」
呆れ気味に溜め息を吐いた由希に一言謝って、俺はそこから立ち去った。
次の言葉がなければ…─。
「…ねぇ、謙人くんが好きな人って裡くんだよね?」
「……。」
「…図星だ。…って言うか付き合ってるんだもんね。」
…は?
何で知ってんだよ。
いや、別れたけども。
てか…何で?
意味が分からず何故知っているのか尋ねると、由希は「場所を変えて話したい事がある」と少し控えめに笑った。
─…気の所為…か?
一瞬見た由希の笑顔に、悲しみの色が混じっているような気がした。
何故そんな風に感じたのか…俺には理解出来なかったし、ただ首を傾げるしかなかった。
(SIDE:謙人 END)
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