○
「なぁ、どうしたかって聞いてんだろ?」
イラついて口調が荒くなった。
それでも涼介はずっと黙ったままで、やっぱりぼーっと上の空。
なぁ、教えてくれよ。
何だよこれ。
誰がつけたんだよ。
全く答えてくれない涼介にイライラが積もり、遂には最高潮に達する。
何もかもが理解不能で、最早先程までの戸惑いなんかは忘れてしまっていた。
「チッ…!‥何か言えよッ!!!!」
低く怒鳴る。
俺は、嫉妬してるんだ。
"誰か"が涼介に痕を残した事に…。
怒りに心も体も震えるのは、
──これほどまでに愛しているから。
「………ねぇ……俺達‥、」
ようやく口を開いた涼介の、掠れ気味なか細い声に、俺はまた驚く。
数秒前の怒りはスッと消え去り、今度は意味の分からない不安がまた押し寄せた。
だって…
涼介のこんな声は、聞いた事がない。
「…付き合ってる、よね?」
「………。」
付き合ってる。
付き合ってる筈なのに、声が出なかった。
今まで恋人らしい事をした事もないし、恋人として涼介に接した事がない。
「うそ……なんで、何で黙ってるの…?俺、一人で勘違いしてた?」
「‥勘違いじゃ…ない、付き合ってるだろ。」
「………。」
黙り込んだのを悪いようにとったのか、涼介の声が震えだす。
俺はそれに反応し、あの日のようにキツく抱き締め心の中で誓った。
─もう悲しませない。
今日から涼介だけを、いっぱい愛してやるんだ。
「涼介ごめん。‥もう浮気なんてしないから。」
「…本当?もうしない?」
「…あぁ。」
また強く抱き締める。
それはあの日と同じでも、感情が違う。
もう気持ちはハッキリしていた。
俺はただ、
ただ、涼介を幸せにしたい…ー
「…信用、出来ない。」
「……っ、」
俺を引き離して、涼介は言い放つ。
そして次に言われた言葉に、俺は言葉を失った。
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