○
「…りょうすけ、俺…」
二人で見つめ合う。
言葉にすれば甘いようでも実際には重苦しいこの空間で、長い時間をそうしていたように感じた。
けれどそれは所謂体感的なものであり、数秒の間があっただけだった。
「……涼介が好きなんだ。」
謙人の口から始めて聞いたその言葉に声が出ない。
今……なんて?
「…最初は、涼介が俺に対して恋愛感情持ってるって気付いた時に…親友に裏切られたって感覚になって……スゲェ嫌だった。」
俺の腕を掴んでいた手がソッと離れていく。
そしてその手で顔を覆いながら、また話し出した。
「だけど、俺が幾ら浮気しても黙って見てる涼介に段々腹立ってきて…浮気続けてさ……多分、本当は、涼介に嫉妬して欲しかったんだよ、俺。」
嫉妬して欲しかった‥?
そんなのっ…、
俺は毎日してたよ。
別れた今だって、もう狂いそうな程嫉妬してるって言うのに…。
「こんなの言い訳にしか聞こえないかもしれないけど。…涼介が好きだ。涼介が襲われたって聞いた時も、相手を殺してやりたいくらいだった…。好きだ……涼介。」
正面から引き寄せられて、そのまま抱き締められる。
俺の顔は謙人の胸に押し付けられて、少し苦しくなった。
─謙人が俺を好き?
そんな話、聞いた事がない。
だって謙人の気紛れで付き合い始めて…だから浮気ばっかりして、
「うそ……」
「…嘘じゃない。好きだ。」
そう言って抱き締める腕にまた力が入った。
あぁ、知ってる。
あの時も、始めて浮気した時もそうだった。
こうやって強く抱き締めてくれた。
それが嬉しくて、
安心して…─
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