これ以上の存在はない
(SIDE:涼介)



「ごめん、」



謙人が重い口を開いた。

だけど一言目に出てきた言葉が、一体何に対しての謝罪なのかがよく分からなかった。

思わず「何の事?」と聞き返しそうになったけど、とっさに「話を聞いてくれるだけで良い」と言われたのを思い出して次の言葉を待つことにした。

これから何を言われるかなんて検討もつかなくて、少し怖いけれど‥



「…聞いたんだ、さっき。涼介が……襲われてたって、聞いた…なぁ、本当なのか…、」



き、聞いたって…誰から?

襲われてたって、あの日の事だよね?

なんで謙人が知ってるのか分からなくて、血の気が引いていく様な感じがした。

そんな俺の様子を肯定と取ったのか、今度は謙人が顔色を悪くして頭を抱えだした。



「ごめん‥、俺の所為だっ…涼介、俺っ…涼介の事傷付けてばっかで…ごめん。俺が浮気したから、こんな事になって…、」



謙人から、ただただ後悔の色だけが見えた。

だけど今更そんな風に謝られたってどうする事も出来なくて…



「も……いいよ…、」

「……っ。」

「話は‥終わり?」



「じゃあ、行くね、」と一言呟いて立ち上がる。

すると腕を謙人に掴まれた。

見上げたら目が合って、同時に俺の腕を掴んでる手に力が入る。





ゆらゆら揺れる瞳は何を思っているのか、苦しげに歪んで見えた。



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