これ以上の友情はない

親友が恋人に。


とは言え、俺達は前と何ら変わらなかった。

毎日一緒にご飯を食べて、毎日同じ部屋でのんびり過ごす。

学校でも一緒。

登校も下校も教室も全部一緒。



全部同じ。



だから俺達は幼なじみから恋人へ名前が変わっただけで、後は何の変化もなかった。

イチャイチャしないし、デートだとか恋人らしい事は何一つない。

正直な所、本当に付き合ってるのか疑問に思うくらい何もない。



「それマジで付き合ってるのか?」

「…うん………多分、」

「多分って何だよ。」



怒ったように、だけど呆れたように言って溜め息を吐いたのは、クラスで一番仲のいい友達である前島秀明であった。



「涼介が奥野を好きなのは知ってたけど…やっぱ夢じゃねぇの?」

「そんな事っ……うん、‥ないよ、」

「何その間。つか目見て言えって。」



秀明は俺と謙人が付き合い始めた事を唯一知っている人物だ。

モテる謙人と付き合ってるなんてバレた日には何をされるか分かったもんじゃないし、周りに公言するなんて自爆しに行くのと同じだった。

それなのに何故秀明が知っているかと言うと、俺が密かに恋愛相談なんかをしていたからだ。

始めこそ名前を出さずに話していたが、勘の良い秀明にまんまと相手がバレてしまった。

秀明曰く、俺は表情に出やすいらしい。

それを聞いた時は真剣に『そんなのヤバイよ!治さなきゃ!』なんて焦ったけど、無意識での行動を正すなんて無茶な話しで、結局その分かりやすい態度が功を奏して謙人と恋人関係になることが出来たのだ。

たんに運が良かったんだと思う。

まぁそんな流れで秀明にだけ報告したんだ。



「…」

「涼介はそれでいい訳?恋人なのにそんな中途半端でさ。…あぁー、せっかく念願叶って、あの『遊び人奥野謙人』の恋人になれたのにー。」

「ちょっ、秀明!」



今はまだ教室だというのに、若干大きめの声で言った秀明に焦る。

周りに聞こえてないか不安になり周りを見渡すが、幸いにも俺達を気にするような人は見当たらなかった。


ホッとしたのも束の間、再び前の席に座る秀明を見る。

それから、不機嫌丸出しで口を開いた。



「…謙人の事、悪く言わないで。」

「‥涼介の好きな人だしあんまり悪いようには言いたくない…けどな、アイツ良い噂聞かないし。」

「……。」

「やっぱり止めた方がいいんじゃねぇの?涼介みたいなイイ奴、他には居ねぇし…奥野以外にもっと良い奴居るって。」

「っ…そんな事ない。謙人以外なんて無理。」



想像しただけでも無理だ。

謙人以外の誰かが隣に居るなんて考えられない。



「…………どこが良い訳?顔?体?」

「か、体ってっ!!!」



秀明の発言に赤面する。

正直俺はそう言った事には疎くて、まだ経験もなかった。



「あぁー悪い。体はねぇか。今それについて相談してるのにな。…じゃあ顔か。」

「どっちも違う!!!」



顔を紅くする俺にニヤニヤしながら言った秀明。

…多分この人、ドエスです。



「じゃあどこ?奥野の良い所。」


謙人の良い所……




「‥優しい。」

「へぇ。」

「格好いいし、笑顔好きだし、全部好き。」

「…………やっぱり顔?」

「違うって!」



た、確かに優しい以外は容姿の事だったけど…だけど違う!!



「ずっと一緒に居たから。だから、謙人の悪い所も良い所も、全部知ってる。それを分かってて好きなんだ。」



そう。

悪い所も良い所も、全部受け入れようって思えるのは謙人だけ。



「ベタ惚れだな。」

「……うん。」



赤面しながら謙人の事を話す俺に、「青春だな。聞いてるコッチが恥ずかしくなる」と秀明は俺の頭を軽く叩いた。



「ハァ…まぁとにかく、ツラくなったら言えよ。」

「…うん、分かった。」



それだけ言い残し、秀明は自分の席へ戻っていった。



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