山田行道の彼女
「それにしても…貴方はどうしてそうなんですか。」
「…何が。」
「彼女ですよ。一人の子を大切にしようと思わないんですか。」
「思ってるよ、本気で。…でも、すぐに冷めるんだ、1ヶ月も経てば。」
山田は相変わらずムスッとしながら答えた。
柿田は呆れたような顔をし、日高はゴミでも見るような冷たい眼差しを山田に向けた。
「恋を知らないのね、可哀想に。」
「オイオイオイ、さっきの汐らしさ何処行った?」
「煩いわね。山田、アンタの付き合い方は普通じゃないのよ。いきなり告って一方的に束縛して急に振るなんて…全く意味が分からないわ。」
日高は山田の付き合い方をそれなりに知っていた。
だからこそ呆れたように言い、訳が分からないと首を振った。
「普通じゃない?じゃあ何が普通なんだよ。」
山田は日高を睨み付けた。
この付き合い方が可笑しいのならどうすれば良いのか教えてくれと。
山田の付き合い方は確かに無茶苦茶であった。
まず一目惚れと称してよく知りもしない相手に告白をする。
そして毎日欠かさずメール、電話で近況報告のやり取り。
そうやってそれなりの束縛をした。
束縛をするのに理由はなく、義務感のような思いで一方的に束縛していた。
しかし最終的にはその義務感の所為で息苦しくなり、自分で自分の首を締める状態となった山田は恋愛熱が冷めると速攻で彼女を振る…
という大変迷惑な悪循環を作っていた。
日高はこれらの事実を間接的に何人もの女子から聞いていた。
山田の事情を知らないだけに結果だけ聞けば大変宜しくない話である。
「普通はね、それなりに知り合って、デートして、付き合って…デートを重ねて、チューして、イチャイチャして…それが普通でしょ。山田のはいきなりお付き合い、束縛、振る。これって何?何がしたいの?」
「……なんだろうな。」
日高の勢いに圧倒され山田は自身の髪の毛をかきむしった。
聞かれても分からない。
自分が知りたい。
消化しきれない感情が溜まり苛ついてくる。
山田は出されたお茶を一気に飲み干した。
「そうだわ!一度ちゃんとしたデートをしてみれば良いのよ。」
「…はぁ?」
いきなり日高が目を輝かせて言った。
そんな日高が奇妙だと山田は嫌そうな視線を送る。
「委員長!山田とデートしてあげて下さい!」
「ッ!何で私が!」
「だってこれ以上山田の被害者を増やす訳にはいかないですし。これを機に真面目な付き合い方を山田に教えるんです。そうすれば山田の付き合い方も少しはマトモになって長続きするでしょう。」
日高の提案に柿田と山田は目を丸くした。
なんて突飛な考えだろうと。
「日高の考えは一理ありますね。でも私は嫌ですよ。山田行道にさく時間なんてこれ以上ありません。」
「チッ…俺かってお前、そんな時間ねぇよ。この堅物女。」
キッパリと拒否した柿田に山田は苛ついた。
こうもハッキリ断れるのは気持ちの良いものでない。
「私はね、山田が誰かと付き合うのなんて正直どうでも良いし勝手にしろって感じなんです。でも、付き合い方を知らないからこうなってるんじゃないですかー?だからここは委員長がズバッと実践でですね」
「私じゃなくとも日高が相手をすれば良いでしょう。」
「いいえ、山田は相当私を嫌っている様なので。委員長が適任です。」
目の前で繰り広げられる『山田の譲り合い』に、張本人である山田の苛立ちが増していく。
山田行道、こんな扱いだがこれでもモデル級の美男子である。
←→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!