山田行道の足枷
山田は今後の事を考えながら重い足取りで学校へ向かっていた。
もう下手に彼女を作れない。
この事実が山田を暗くしていた。
風紀に目を付けられている山田は今後大人しく学園生活を送るしかないのだ。
きっと女子の感に障るような事をする度に山田の悪評が出回り、ある事ない事全て大袈裟に伝わるのだと嫌な妄想に捕らわれ始めた。
これ以上学校での居場所がなくなるのは非常に困る。
─ だから女は怖いんだ。
こんな時だけ、団結が強くなる。
山田は内心頭を抱えた。
相変わらずナーバスな脳内で思案していると誰かと肩がぶつかった。
「…てッ、あ、大丈夫です、か?」
「………。」
ぶつかった相手は謝りながら顔を上げた。
その顔を見て山田は声を失う。
ぶつかった女子の可愛さに見とれてしまった。
「…あの、」
「あ、いや、大丈夫。君こそ平気?」
「…まぁ、はい。では。」
彼女は山田の返事を聞くとサッと立ち去ってしまった。
一瞬しか見れなかったが、あんな可愛い子がこの学校に居たのかと山田は驚いた。
そして同時に山田は閃いてしまった。
校内で彼女を作れないなら、校外で女を作れば良いのだと。
何故これを思い付かなかったのかとうなだれる一方で、闇に光が射したような気分だった。
この一件で山田のテンションは鰻登り。
もう彼に怖いものはなかった。
「柿田、聞いてくれ。俺は誠心誠意誓って心を入れ替える。もう風紀の世話にはならない。」
「……頭でも打ったか。」
「いいや。今朝天使を見たんだ。あれは天使だった。彼女を見て思った、心を入れ替えようと。」
「………。」
いつものようにゴミでも見るかのような視線を送られたが今の山田には通用しなかった。
山田行道は本気なのだ。
校内で風紀さえ乱さなければ目を付けられない。
こんな当たり前の事に今更気付き、それを当たり前だとは知らずに心を踊らせていた。
「なんか知らんが…余計な事はするなよ。」
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