山田行道の相棒

午後の授業は体育であった。

男子は人数が少ないので隣のクラスとの合同授業。

本日はキャッチボールをするようで、体育教師は二人一組のペアを作るように言った。




山田は思い悩む。


こうして突っ立ってるうちにもペアが続々と完成するが、自分は誰と組めばいいのか分からない。

以前ならきっと迷わず柿田優一をペアにしていただろうがそうもいかない。


「全員相手決まったかー。それじゃあバラけろー。」


大体大丈夫だろうと踏んだのか体育教師がそれぞれ分かれて練習するよう言ってのけた。

それを区切りに各自バラけていく。



─ ヤバい、どうしよう…



山田が不安になって模索していた時、体育教師と目があった。

逸らす暇もなく感づかれる。

相手が居ない事を。


「お前らー。端の方空いてるから。ほら、さっさと行ってこい。」


と思ったが、違ったようで的外れな事を言われる。

教師は山田に目掛けてボールを投げた。

投げられたボールをキャッチし反射的に振り向く。


「あ…、」


少し離れた所で柿田優一が突っ立っていた。


「来週試験するから、突っ立ってないで練習だ。ほら歩く。」


見かねた教師がまず山田を、次に柿田の背をどんどん押していき二人を端へ追いやった。

事情を知らない教師の中では、いつもの二人と言えば山田と優一なのだろう。

なんの疑問も持たずに二人をペアにしていた。



端の方に歩きながら、二人の間に気まずい沈黙が流れる。

大体の場所に着いてからも二人はだんまりだった。


「……するか。」

「…ん。」


小さく話し、二人は距離を取った。







山田は思う。

確かに…優一は要領が悪い。

練習を始めてからずっと、優一は取り逃したボールを追い掛けるばかりで全くキャッチボールになっていなかった。


「…のろま。」


ボールを追い掛ける後ろ姿に悪態を吐く。

しばらくすると苦しそうに胸を押さえた優一が定位置に戻ってきた。


無理もない。


あの軟弱な身体でずっと走っている。




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あきゅろす。
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